少子高齢化と長引く経済の停滞が続く現代日本において、親世代が抱く不安は自身の健康や介護の問題だけにとどまりません。特に深刻な影を落としているのが、働けない、あるいは働かないまま中高年となった子を抱える「8050問題」の深刻化です。親が亡くなった後の子の生活をどう保障するのか、あるいは親の資産を巡るトラブルをどう回避するのか。ある男性のケースから、その実態を見ていきます。
「お父さん、死んだらこの家ちょうだいね。」年金月18万円・72歳父が震えた、正月帰省で〈45歳の働いていない息子〉が放った「残酷すぎる一言」 (※写真はイメージです/PIXTA)

中高年層の「親への依存」……統計にみる「8050問題」のリアル

内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査』によると、40歳から64歳までの引きこもり状態にある人は全国で推計約80万人にのぼるとされています。この調査結果は、かつて若年層の問題とされていた引きこもりが高齢化し、いわゆる「8050問題」として社会に定着していることを如実に示しています。

 

さらに、総務省『労働力調査(2024年平均)』によると、35歳から44歳の非労働力人口のうち、通学も家事もしていない「無業者」は60万人弱とされています。こうした層のなかには、親の年金や資産を唯一の生活の糧としているケースも少なくありません。

 

親世代が直面するのは、まず経済的問題です。厚生労働省『令和6年 国民生活基礎調査』によると、約4割の高齢者世帯が収入のすべてを公的年金に頼っており、収入の8〜10割を占める世帯も含めると6割にも達します。年金への依存度が高いなか、現役世代の子を養う余裕は事実上ありません。

 

また、相続における「空き家問題」も密接に関係しています。親の死後、経済力のない子が実家を相続しても、固定資産税の支払いや建物の維持管理ができず、資産であるはずの不動産が「負の遺産」化するリスクも指摘されています。

 

専門家は、こうした親子間の依存関係を解消するためには、早い段階で外部の支援機関(自立相談支援機関など)に相談することが重要だと強調しています。

 

「親が死ねば解決する」という子の安易な期待は、実際には相続税の負担や社会保障の手続き、そして何より本人の生活能力の欠如によって、さらなる破綻を招く恐れがあるのです。