結婚25年目、銀婚式を迎えたばかりの夫婦を突然襲った別れ。死亡保険金・退職金で2,500万円、預貯金と合わせて2,800万円――残された妻はひとまず安堵します。しかし葬儀が終わったあと、義母から突きつけられた「まさかの一言」で、状況は一変。妻は夫を亡くした悲しみの中で、義母とお金の問題に苦悩することになります。ファイナンシャルプランナーの三原由紀氏が事例と共に解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
私にも、お金ちょうだい…仕送りが途絶えた78歳義母の“まさかの要求”。亡き夫が残した〈2,800万円〉を支えにする52歳妻に訪れた「静かな修羅場」【FPが解説】
残された妻に、義母を扶養する義務はあるのか?
制度上、結論は明確です。残された妻が、夫の母親(義母)を扶養する法的義務は原則としてありません。
民法は「直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある」と定めていますが、直系血族とは、自分と血のつながりがある親・祖父母・子・孫などで、義理の父母はこれに含まれません。また、今回のケースでは、相続人は恵子さんと子ども2人。義母には相続権はなく、死亡保険金も受取人である恵子さん固有の財産とされます。
数字を整理してみましょう。預貯金300万円と受け取った2,500万円を合わせると、2,800万円です。ここから、長男の後期学費約50万円、次男の将来の教育費として見込む700万円、合計750万円を差し引くと、残るのは約2,050万円です。
一見すると、十分な金額に見えるかもしれません。しかし、恵子さんのパート収入の年100万円ほど。65歳になるまでは遺族厚生年金と中高齢寡婦加算で年130万円前後の収入見込みもありますが、マンションの修繕積立金や管理費の上昇、そして何より自分自身の老後資金を考えると、「義母に渡せる余裕はない」というのが正直な気持ちでした。
52歳という年齢から、正規雇用への就職も検討していますが、生活を立て直すには少なくとも1~2年はかかるでしょう。見通しが立たない中で、義母にお金を渡すことは、精神的にも現実的にも重い判断でした。
義父は他界しており、義母が不安になる気持ちが理解できないわけではありません。年金生活で余裕がないからこそ、夫も仕送りをしていたのでしょう。
それでも、「このお金は、もうこの世にいない夫が、私と子どもを守るために遺してくれたものではなかったのか」という思いも、ぬぐい切れませんでした。