残された妻に、義母を扶養する義務はあるのか?

制度上、結論は明確です。残された妻が、夫の母親(義母)を扶養する法的義務は原則としてありません。

民法は「直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある」と定めていますが、直系血族とは、自分と血のつながりがある親・祖父母・子・孫などで、義理の父母はこれに含まれません。また、今回のケースでは、相続人は恵子さんと子ども2人。義母には相続権はなく、死亡保険金も受取人である恵子さん固有の財産とされます。

数字を整理してみましょう。預貯金300万円と受け取った2,500万円を合わせると、2,800万円です。ここから、長男の後期学費約50万円、次男の将来の教育費として見込む700万円、合計750万円を差し引くと、残るのは約2,050万円です。

一見すると、十分な金額に見えるかもしれません。しかし、恵子さんのパート収入の年100万円ほど。65歳になるまでは遺族厚生年金と中高齢寡婦加算で年130万円前後の収入見込みもありますが、マンションの修繕積立金や管理費の上昇、そして何より自分自身の老後資金を考えると、「義母に渡せる余裕はない」というのが正直な気持ちでした。

52歳という年齢から、正規雇用への就職も検討していますが、生活を立て直すには少なくとも1~2年はかかるでしょう。見通しが立たない中で、義母にお金を渡すことは、精神的にも現実的にも重い判断でした。

義父は他界しており、義母が不安になる気持ちが理解できないわけではありません。年金生活で余裕がないからこそ、夫も仕送りをしていたのでしょう。

それでも、「このお金は、もうこの世にいない夫が、私と子どもを守るために遺してくれたものではなかったのか」という思いも、ぬぐい切れませんでした。