老後のベースとなる公的年金。受給開始時期を遅らせる「繰下げ受給」を選択し、十分な年金を手にする高齢者も徐々に増えつつあります。しかし、経済的な余裕が必ずしも安泰な老後を約束するわけではないのが現実です。手厚い年金を受け取りながらも一転して過酷な現実に直面したある男性のケースをみていきましょう。
もう耐えられない…「年金月25万円」の70歳男性、繰下げ受給で老後安泰のはずが、孤独な病院暮らしの誤算 (※写真はイメージです/PIXTA)

70代20人に1人は要介護…それでも繰下げ受給がいいのか?

老後を見据えて経済的な準備を整えていても、健康状態の変化によって生活の質(QOL)が著しく低下するケースは珍しくありません。

 

厚生労働省『介護給付費等実態統計月報』等によると、年代別の人口に占める要介護認定者の割合は、40~64歳では0.4%、65~69歳では2.9%ですが、70~74歳で5.8%、75~79歳で11.6%、80~84歳で26.2%、85歳以上で60.1%と、加齢とともに加速度的に増えていきます。

 

介護が必要となった主な原因としては「認知症」が最も多く16.6%。「脳血管疾患(脳卒中)」16.1%、「骨折・転倒」が13.9%、「高齢による衰弱」13.2%、「関節疾患」10.2%と続きます。

 

一方で健康寿命(2022年推計値)は、男性72.57歳、女性75.45歳です。70代に突入すれば、「病院が友だち」という状況になるのも、時間の問題といえるでしょう。平均寿命と健康寿命の乖離(かいり)は9~12歳程度であり、ある意味 “不健康な期間” は、老後において見落とされがちです。何も考えずに、受取りが70歳以降になる年金の繰下げを選択するのは、少々早計かもしれません。

 

また佐藤さんのように、介護が必要となった単身者にとって、孤独は密接な関係にあります。これは孤独死リスクの増加や、精神的負担、身体機能の低下につながりやすいものです。

 

【単身高齢者の孤独化の先にあるリスク】

・孤独死のリスク: 異変に気づく人がおらず、体調悪化や事故に直結する。

・精神的孤立: 人との交流が減り、孤独感からストレスを抱えやすい。特に男性は社会とのつながりが希薄になりがちである。

・生活の質(QOL)の低下: 頼れる人がいないと、生活意欲の低下や健康管理(食事、服薬など)が困難になる。

 

見守りサービスや緊急通報システム、デイサービスの利用、地域コミュニティへの参加などを活用し、孤立を防いで安心して暮らせる環境を構築することが重要です。