十分な老後資金を持ちながらも、将来への漠然とした不安から財布の紐を締め続け、75歳を超えて後期高齢者となる……そのようなケースも珍しくありません。 厚生労働省が発表した最新の統計では、平均寿命と健康寿命の間には約10年の乖離があります。そのような老後をどう生きるか。ある夫婦のケースを見ていきます。
〈退職金2,800万円〉〈預貯金4,000万円〉〈年金月28万円〉でも質素倹約を貫く72歳夫婦が豹変。突如、豪華海外クルーズ旅行に出かけたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

老後資金が減るのが怖い…どう恐怖と向き合えばいいのか

老後不安から、十分な資産がありながら支出に対して恐怖を感じる人は、日本の高齢者世帯において決して珍しい存在ではありません。

 

老後を前にして、まず直視すべきは平均寿命と健康寿命です。厚生労働省『令和6年簡易生命表(2025年発表)』によると、日本の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.13歳。一方で日常生活に制限のない健康寿命は男性で約72歳、女性で約75歳前後となっています。

 

佐藤さんが72歳という年齢で豪華旅行に踏み切ったのは、統計的に見て「自由に動けるラストチャンス」の時期に差し掛かっていたからだと言えます。平均寿命までの約9~12年間は、身体的な制限や介護の必要性が高まる時期であり、特に長期の旅行などは叶えることが困難になるでしょう。

 

また、多くの高齢者が懸念する介護費用についても、具体的な相場を知ることで漠然とした不安が、より輪郭のはっきりしたものになります。 生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査(2人以上世帯)2024年度』によると、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、住宅改造や介護用ベッドの購入費など一時的な費用の合計が平均47.2万円、月々の費用が平均9.0万円です。

 

さらに介護施設に入る際には、家賃の前払いとなる入居一時金と、月額費用がかかるのが一般的です。入居一時金は0円から数千万円と幅広く、施設によっては億を超えるケースもあります。月額費用は20万円前後から、なかには50万円といったところも存在します。 仮に入居するとしたら、どのような場所が良いか、具体的なイメージがついていると、なお良いでしょう。

 

根拠のない将来不安のために現在の満足度を犠牲にするのではなく、まず「守るべき金額」と「使ってもよい金額」を明確に切り分けること。一見シンプルですが、年を重ね、身体の不自由が進んだときに「もっと人生を楽しめばよかった」と後悔しないための重要なポイントです。