「知らなかった」では守れない―親子で考えるお金との向き合い方

美智子さんは、娘にあまりお金の心配をかけたくないという気持ちや、自身ももともとお金のことが得意ではなかったのもあり、これまで結衣さんとお金の話をすることを避けてきました。ですが今回、娘を無防備なまま社会に送り出してしまっていたことに気がつきました。

その後、一人暮らしをする結衣さんのお金の使い方についても、二人で1ヵ月のお金の出入りや予算、クレジットカードなどの決済手段の使い方について確認しました。また、「手元にあるお金以上使わない」、「分割払いはしない」という約束もしました。

学校で金融教育が始まったとはいえ、知識だけで判断できるようになるわけではありません。リアルな社会で身を守るために必要なのは、実際の生活の中での経験や学びです。

親世代自身も、体系的にお金を学ぶ機会は少なく、「お金の話はしづらい」と感じてきた方が多いはずです。 それでも、日常の中で親がお金に向き合う姿を見せたり、話をしたりすることが、何よりの金融教育になります。

そして、小さいうちから自分でお金を扱う経験も大事です。子どものうちは、お金で失敗することがあっても、影響は大きくありません。大切なのは、“失敗させないこと”ではなく、徐々に経験を通して判断力を身につけていくことです。

親が子どものために教育費を用意することも大切ですが、「お金とどう向き合い、どう判断し、どう立て直すか」を伝え、自分を守るため、未来を生き抜いていくための「金融リテラシー」を身につけさせてあげることも、親が子どもに残せる大きな財産です。 経験と対話の積み重ねが、子どもと親、双方の未来を守ることにつながっていきます。

伊藤 寛子
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)