「真面目に働いていれば、老後は安泰」というかつての常識が、今や過去のものとなりつつあります。50年ほど働き、人並みの年金を受給しているはずの人でさえ、止まらない物価高や都市部での高い生活コストという現実に、苦しい状況に追い込まれているのです。​ある男性のケースを見ていきましょう。
10円のもやしで腹を満たすことばかり考えている⋯「年金月16万円」都内72歳男性が直面する老後安泰の崩壊、物価高に潰される残酷な現実「50年働いた結果がこれか」 (※写真はイメージです/PIXTA)

物価高が直撃する「年金生活者」の厳しい台所事情

​厚生労働省『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金(第1号)受給者の平均年金月額は、基礎年金を含めて15万1,142円。前年度と比較すると平均で3,700円ほど増えています。また65歳以上・男性の厚生年金受給権者に限ると、平均受給額は月額17万3,033円。こちらも前年から平均で3,500円ほど増えています。さらに年金受取額の分布をみてみると、男性で月17万円以上を受け取っている人は36.2%。元会社員の6割以上は平均以下の受取額というのが現実で、佐藤さんもそこに含まれます。

 

​一方で、総務省『家計調査』によると、単身高齢者の1ヵ月の平均的な支出は15万円程度。年金の受取額から税金や保険料などを差し引くと、たとえ年金受取額が平均的であっても、年金だけで暮らすのは厳しいのが現状です。

 

そこにきて、家計を圧迫している最大の要因が物価高。総務省『消費者物価指数(CPI)』によると、生鮮食品を除く食料品やエネルギー価格の上昇が顕著です。賃金が上昇傾向にある現役世代とは異なり、年金受給額は物価変動に完全に連動して増えるわけではありません。「マクロ経済スライド」などの調整メカニズムにより、実質的な購買力は低下傾向にあります。

 

今の年金世代の多くは、真面目に働き、保険料を納めていれば、老後は安泰と考えてきました。しかし2019年、金融庁の報告書で「高齢夫婦無職世帯が老後30年で約2,000万円不足する」と試算され、老後を見据えた資産形成の重要性が声高に叫ばれるようになりました。今の年金世代は時すでに遅く、ただ耐えるしかありません。

 

一方で、そんな高齢者を目の当たりにする現役世代には、「今後、年金は2割目減りする」というさらに厳しい未来が待っています。時間を味方にして、できるだけ早く資産形成に取り掛かるしか、防衛策はなさそうです。