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健康寿命と「手取り額」の現実…統計から見る繰下げ受給の判断基準
佐藤さんが目の当たりにした「健康リスク」と「手取りの目減り」という問題。
厚生労働省『令和4年版厚生労働白書』によると、日本の平均寿命と「健康寿命(日常生活に制限のない期間)」の間には、男性で約9年、女性で約12年の乖離があります。男性の健康寿命の平均は約72歳。70歳まで年金の受給を我慢した場合、増額された年金を自由に使い、活動的に過ごせる期間は統計上、わずか数年しかないというのが現実です。
また、繰下げ受給によって年金額を増やした場合、家計に与える影響は受給額の増加だけではありません。公的年金は雑所得として課税対象となるため、受給額が増えれば所得税・住民税が当然増えます。さらに見落とされがちなのが社会保険料への影響です。
国民健康保険料や介護保険料は、前年の所得をもとに算定されます。たとえば第1号被保険者の保険料は所得区分に応じて段階的に設定されています。年金収入が増えることで所得区分が上がり、保険料が一段階高くなることで、年間数万円単位の負担増となるケースがあります。
繰下げ受給で年金の額面が1.42倍になっても、手取り額は同じ比率では増えません。また、75歳以上の「後期高齢者医療制度」においては、年金を含めた所得が高いと、窓口負担が1割から2割、あるいは現役並み所得として3割に引き上げられる判定基準(課税所得145万円以上など)に抵触するリスクも高まります。
「繰下げ受給は長生きに対する保険」という側面があることは間違いありません。しかし、佐藤さんのように「今、この瞬間の健康」と「将来の税負担」を天秤にかけて、自身にとって納得の結論に至ることが重要です。