(※写真はイメージです/PIXTA)
東京の喧騒を離れ、故郷へ
都内の企業を65歳で定年退職したマサキさん(仮名)は、地元への移住を決断しました。妻のリンコさん(仮名)とともに、40年ぶりに住むことになったのは、東北地方にある人口数万人の街です。
「東京の生活には疲れましたよ。満員電車、高い物価、そして隣に誰が住んでいるかもわからない希薄な人間関係。故郷に戻れば、懐かしい友人もいるし、豊かな自然に囲まれて、退職金と年金でゆったり暮らせる。そう信じて疑いませんでした」
マサキさんの手元には、退職金2,200万円と、これまでの貯蓄を合わせた十分な資金がありました。「地方なら物価も安いし、これだけあれば死ぬまでお金には苦労しないだろう」そんな自信もあったのです。
移住直後に突きつけられた「驚愕の事実」
マサキさんは実家の古い家を1,500万円かけてフルリノベーションしました。最新の断熱材を入れ、バリアフリー化した住まいは完璧なはずでした。しかし、暮らしはじめてわずか1ヵ月、マサキさんの理想の生活は大きく崩れてしまいます。
ある日、水道から水漏れが発生しました。リノベーション業者の不備だったようです。初期対応が悪く、信用ならないと判断したため、ほかの業者を探すことに。東京ならスマホで検索すれば、数時間以内に別の業者がみつかります。しかし、田舎の地元では思いどおりになりません。
「地元の数少ない水道屋に電話しても、『いまは忙しくて最短でも2週間後だ』と断られるんです。トイレすら使えないのに。ほかの業者も同様で、挙句の果てには『その地域はもう担当者が引退して、回れる人間がいない』といわれてしまいました。東京では当たり前だった『お金を払えばすぐ解決する』というサービスそのものが、ここでは消滅していたんです」
そのほかにも、庭の草刈り、屋根の点検、ちょっとした家電の不調。かつては地元の「顔見知りの業者」が支えていた生活基盤は、担い手不足により完全に機能不全に陥っていました。