離れて暮らす親の「老い」に、私たちはどれだけ気づけているでしょうか。「うちはまだ大丈夫」という思い込みが、時に命に関わる事態を招くことがあります。ある親子のケースを見ていきます。
まさか自分の親が…深夜の雪降る国道で保護された82歳父。警察署に駆けつけた56歳娘が見た「驚きの惨状」 (※写真はイメージです/PIXTA)

年間1万9,000人以上が「認知症」で行方不明に

健一さんは、「近くのコンビニに行こうとした」と話しましたが、実際に保護されたのは自宅から3キロも離れた国道でした。これは典型的な認知症による徘徊だといえます。

 

「少し前から、父の様子がちょっとおかしいと思っていたんです。しかし、父が『大丈夫』と言うから、それ以上のことは何もしなかった。本当に悔やまれます」

 

警察庁『令和5年における行方不明者の状況』によると、認知症が原因で届け出があった行方不明者は、年間で1万9,039人にのぼります。これは統計を取り始めて以来、過去最多の数字であり、前年と比較しても1,000人以上増加しています。

 

この多くは無事に保護されますが、なかには死亡して発見されるケースや、所在が確認できないままのケースも存在します。認知症の徘徊は、本人に「迷っている」という自覚がないことが多く、季節や天候に関係なく外に出てしまうため、命の危険に直結します。

 

家族だけで見守るには限界があります。「少し様子がおかしい」と感じたら、まずは住んでいる自治体にある「地域包括支援センター」へ相談するのが先決。介護保険の申請や、見守りサービスの利用など、専門家が状況に応じた解決策を提案してくれます。親を危険から守るためにも、早めの「情報収集」と「相談」が、大切な家族の命をつなぐ第一歩となるのです。

 

[参考資料]

警察庁生活安全局人身安全・少年課『令和5年における行方不明者の状況』

 

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