(※写真はイメージです/PIXTA)
「共働きだから安心」が招いた、老後資金の誤算
「夫の葬儀を終えた翌日、これからの生活の手続きをするために年金事務所へ行きました。そこで職員の方から遺族年金の概算金額を聞いて、私はその場で泣き崩れてしまったんです」
都内在住の佐藤佳子さん(67歳・仮名)。1年ほど前、3歳年上の夫・健一さん(享年70歳・仮名)を突然、心筋梗塞で亡くしました。60歳定年まで会社員として働いていた佳子さん、受け取っていた年金は月14万円。一方、65歳まで働いた健一さんが受け取っていた年金は月17万円でした。
「私たちは子どもがいなかったので、お互いの年金が頼りでした。夫婦で月31万円。持ち家でしたし、それだけあれば十分だと思っていました。ただ、いつかはどちらかが残されるときがくる。1人生きていくだけなら、月15万円前後の年金があれば大丈夫だと思ってはいましたが、それでも不安ですよね。そんなとき、友人から『遺族年金があるから大丈夫よ』と言われて安心していました」
その友人は、数年前に夫を先立たれた高校時代の同級生。友人いわく「夫がもらっていた年金の4分の3ほどの遺族年金をもらえているから、何とか生活できている」とのこと。その言葉を聞いて、佳子さんは「自分の場合は、12万円ちょっともらえる」と、瞬時にそろばん勘定したといいます。
「自分の年金と合わせて月26万円強」。これが万一のときに受け取れる年金額だと考えていたといいます。
そして実際にその金額をもらうための手続きと考えて、佳子さんは年金事務所に向かったのです。しかし、職員が概算として教えてくれた金額は、想定を大きく下回るものでした。
「職員の方が申し訳なさそうに言ったんです。『佐藤さんの場合、ご自身の厚生年金が優先されるため、支給される遺族厚生年金は月額6,000円ほどになります』と。耳を疑いました。12万円ほどもらえると思っていたものが、たったの6,000円……。予想していた額の約20分の1です。あまりのショックに、窓口で『そんなはずはない!』と声を荒らげ、夫を亡くしたショックも重なりその場で泣き崩れてしまいました」
佳子さんの計算では、自分の年金14万円に、夫の遺族年金約12万円が加わり、一人になっても月額26万円を超える収入があるはずでした。しかし、年金事務所で告げられた現実は、あまりにも残酷なものでした。
佳子さんは、深いため息をついてこう続けます。
「制度をよく調べもせず、『もらえるはず』と思い込んでいた私のミスです。自分の年金だけでも十分に生きていける。夫が残してくれた遺産もある。それでも、万一のときに受け取れると思っていた年金が大きく減ったことに変わりはない。不安感が消えることはありません」