金価格「史上最高水準」の背景とは
2025年は世界的な不確実性の高まりのなかで、金価格が急騰しました。その勢いは驚くべきもので、金はこの2年で価格が2倍になる記録的なラリーを演じたのです。
たとえば、リーマンショック後には1,000ドルを超え、新型コロナ禍では2,000ドル台に達した金価格は、2025年に新たな局面でついに3,000ドル、そして4,000ドルの大台も突破しています。
実際、金価格は2025年10月に史上最高値となる1トロイオンス=4,300ドル超を記録し、その後も高値圏で推移しました。
これほどの上昇を支えた理由としては、世界的なドル安傾向や継続する中央銀行の金購入、地政学リスクの高まりなどが挙げられます。特に2025年後半には、FRB(米連邦準備制度理事会)が実際に利下げへと転じたことでドルが弱含み、金に資金が集まりやすい状況となりました。
日本に目を向けても、2025年の金相場は非常に堅調でした。2024年にドル円相場で一時160円台まで円安が進行し、その後も2025年を通して150円台半ば~後半という歴史的な円安水準が続きました。円の価値下落と物価上昇への不安から、「有事の安全資産」とされる金に国内マネーが流入し、金小売価格(円建て)は連日最高値を更新。2025年10月にはついに1グラム=23,000円台という、前例のない水準に達しています。
まさに国内でも「インフレ対策」「資産防衛」の手段として金の存在感が増した一年だったと言えるでしょう。
中央銀行による「金の爆買い」が市場を下支え
金相場の上昇を語る上で欠かせないのが、各国中央銀行による金の大量購入です。
実は近年、世界の中央銀行はこぞって準備資産としての金保有を積み増しており、その動向が金需要を下支えしています。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のデータによれば、2022年の世界の中央銀行による金購入量は合計1,136トンに達し、記録が残るなかで過去最高を更新しました。
これは1971年の金本位制終了以降で最大規模であり、中央銀行による金保有はこの年で13年連続の増加となっています。主要な買い手は中国やトルコなど新興国の中央銀行でしたが、西側諸国も含め各国が競うように金を買い増したのです。
こうした、中央銀行の“金離れならぬ金頼み”の傾向はその後も衰えていません。2023年も引き続き大量の純購入が行われ、この買い越しトレンドは2010年以降14年連続で続きました。
この期間に中央銀行が積み増した金は累計で7,800トン以上にも上り、その4分の1超が2022~2023年に購入された計算になります。では、中央銀行がここまで金を買い集めるのはなぜでしょうか?
背景には、自国通貨や米ドルへの信頼が揺らぐなか「最後の価値の拠り所」として、金を見直す動きがあると考えられます。
実際、「中央銀行が金を買い増すのはドルへの信認低下の裏返し」との見方もあるようで、WGCの調査でも「有事の際の金の頼もしさ」「長期的な価値保存手段としての役割」が中央銀行に金保有を促す主要因だと指摘されています。
言い換えれば、プロ中のプロである各国の金融当局自体が「有事に強い金」の魅力を再認識し、積極的に備蓄しているということです。個人の私たちにとっても、これは心強い材料ではないでしょうか。
マクロ経済の環境が金相場に追い風
金相場を語る上では、インフレ(物価上昇)や通貨価値の変動といった、マクロ経済要因も欠かせません。
通常、インフレ率が高まる局面では、金はインフレヘッジ(対策)として資産価値を保ちやすいとされています。実際、物価が上がれば金の価格も相対的に上昇する傾向があり、金投資は有効なインフレ対策になり得ます。
日本でも、近年のインフレ局面で金価格が過去最高値を更新したことは記憶に新しいところです。また、金(実物資産)は有事や金融不安時にもその価値が下支えされる「最後の拠り所」としての安心感があり、通貨や株式が信用を失う局面でも人々が頼る資産となってきました。
もう一つ重要なのが、為替と金利の動向です。金は米ドル建てで取引されるため、ドルが安くなる(ドル安)局面では金の相対的な割安感が増し、価格上昇圧力となります。
2025年後半、米連邦準備制度理事会(FRB)は金融引き締め局面から利下げへ転換し、政策金利を引き下げました。その影響でドル指数は一時98ポイント台まで下落し、世界的なドル安基調が鮮明になっています。
ドル安・低金利になれば無利息資産である金の保有コスト(機会費用)は下がり、相対的に金が持ちやすくなるため、投資マネーが金市場に戻りやすくなります。
実際、2025年後半の金相場急伸の裏には、このドル安と利下げ観測の高まりが大きく寄与しました。今後もし主要国で景気後退懸念から金融緩和(利下げ)が進めば、金利低下と自国通貨安を通じて金価格には追い風となるでしょう。
もっとも、金価格は一本調子で上がるわけではなく、途中には調整局面もありえます。特にインフレや景気動向によって中央銀行が再び利上げ姿勢に転じたり、ドルが反発したりすれば、一時的に金が売られる場面もあるかもしれません。
事実、2025年も米金融当局者のタカ派発言などから金が急落する日があり、市場のボラティリティ(変動)は決して小さくありませんでした。
しかし、そうした局面でも慌てずに長い目で見て構えることが肝心です。次で述べるように、金は短期の投機対象というより「将来の安心のためのコツコツ資産形成」に適した性質を持つからです。
金貨は“想いを残せる資産”──世代を超えて受け継ぐ
金への投資というと、価格変動ばかりに目が行きがちです。しかし、「現物の金」を持つ意義はそれだけではありません。
近年、金地金や金貨を「資産を次世代に残す手段」として見直す動きも広がっています。ゴールドディーラーの話では、「金は価値が大きく崩れにくく長期的に安定しやすいので、自分のためというより子どもや孫のために残す資産として購入するケースがほとんど」とのことです。つまり、金を持つこと自体が将来の家族への贈り物という位置づけなのです。
特に金貨は、「資産価値」と「思い出(想い)」の両面を次世代に手渡せるユニークな存在として注目されています。金貨そのものが世界共通の価値を持ち、インフレや有事にも強いことはもちろんですが、形のある資産ゆえに文字通り手渡すことができる点が大きな特徴です。
たとえば銀行預金の数字や電子的な証券とは異なり、美しい金貨を将来お子さんに直接手渡せば、その資産価値とともに親の想いも一緒に託すことができるでしょう。
実際、金貨は一枚ずつが完結した資産なので相続に適した形といわれ、預金や不動産のように分割方法に悩む必要がありません。1オンス金貨なら小ぶりで保管しやすく、必要に応じて1枚ずつ売却したり複数の相続人に分けたりと柔軟に対応できる点も優れています。
場合によっては「毎年子どもに金貨をプレゼントし、家族の伝統にする」ということも可能で、親から子、孫へと金貨を継承して家族の物語を紡いでいく。そんなロマンも秘められています。金貨は資産価値として優秀なだけでなく、世代をつなぐ絆の象徴にもなり得るのです。
こうした金貨の魅力は、インフレや将来不安が現実味を帯びる今だからこそ、一層輝きを増しているように感じます。
長期にわたって劣化せず、世界で通用する純金コインは、「かけがえのない家族への贈り物」として最適かもしれません。実際に手に取ってみれば、そのずっしりとした輝きに特別な思い入れが湧くものです。金貨を通じて資産とメッセージを未来に手渡す。そんな発想に共感する個人投資家が増えているのも頷けます。
2026年の金相場見通し
最後に、2026年の金相場の展望をまとめましょう。
専門家の予測では、2026年も金は強気相場が続き、1トロイオンス=5,000ドル前後の水準まで上昇する可能性が指摘されています。
もちろん相場ですから短期的な変動は避けられませんが、上述してきたように金には長期的な追い風となる要因が揃っているようにみえます。
中央銀行の旺盛な需要、インフレやドル安といったマクロ環境、そして実物資産としての安心感。いずれも一朝一夕に無くなるものではありません。
だからこそ、大切なのは「目先のニュースに惑わされないこと」です。メディアでは日々様々な報道がなされ、ときに不安を煽る見出しや過熱気味の解説もあります。しかし、私たちは、自分の資産形成の軸をぶらすことなく、冷静に構えることが肝心です。
金は歴史的に価値を失いにくいとされる安全資産であり、長い年月をかけてコツコツ積み立てるのに適した資産です。2026年も、メディア情報に惑わされることなく、地に足をつけて金の積み増しを続けていきましょう!
それがきっと、将来の自分や家族への大きな安心につながるはずです。
小川 竜一
コインパレス 公式アンバサダー
アールトラスト・インベスターズ株式会社 代表取締役
