(※写真はイメージです/PIXTA)

「トランプコイン」や「ビットコイン」をはじめとした暗号資産、新NISA、AI株……投資にはいつの時代も、「ブーム」といえる投資対象が存在します。投資経験の浅い人ほど、流行りに乗って“楽して儲けよう”としてしまいがちですが、そこには大きなリスクが潜んでいます。投資ブームの危うさとリスク管理の重要性、そして「本質的な資産形成」の軸にすべき資産についてみていきましょう。アールトラスト・インベスターズ株式会社代表取締役の小川竜一氏が解説します。

目次
トランプコイン最安値…“ブームに乗った投資”の怖さ
暗号資産ブームの光と影…熱狂の裏にあるもの
熱狂する新NISAブーム…若者の参入とその功罪
AI関連株の急騰…「これはバブル?」といわれる理由
沸騰する米国株人気…その背景と「人気者ゆえのリスク」
SNSとインフルエンサーに要注意…情報過多の時代の落とし穴
金(GOLD)の安定感…「無国籍通貨」を資産の軸に
王道のインデックス投資…長期・分散でコツコツ増やす
流行に流されず、自分の軸を持とう

トランプコイン最安値…“ブームに乗った投資”の怖さ

2025年7月、日本経済新聞に「トランプコインが最安値に接近した」というニュースが掲載され、大きな話題となりました

日本経済新聞「トランプコイン、最安値に接近」(2025/7/2)

 

トランプ米大統領の関連企業が発行した暗号資産「トランプコイン($トランプ)」は、経済的な有用性がなく投機性の高い“ミームコイン”の一種です。

 

その価格は発行直後に75ドル台まで急騰しましたが、その後は下落基調となり、今年4月には7ドル台前半という最安値水準にまで落ち込んでいます。

 

わずかな期間で10分の1以下に暴落したことになり、まさに“ブームに乗った投資”の怖さを物語る出来事といえるでしょう。

 

この急落劇は、過度な投機熱やSNSで煽られるままの安易な投資行動への警鐘となりました。「みんなが儲かっているらしい」と飛びついた投資先が、一転して大暴落……こんな話は決して珍しくありません。

 

実際、ビットコインなど主要な暗号資産でさえ値動きは乱高下しやすく、本質的な価値の裏付けが乏しいと指摘する声があります。「ビットコインには産業利用価値がなくキャッシュフローもない。ビットコインは純粋な投機の手段だ」と、米メディアは痛烈に評しています。

 

投資経験の浅い人ほど、こうしたブームに乗った“楽して儲ける”話に心惹かれてしまうもの。しかしその裏には、大きなリスクが潜んでいるのです。

 

最近話題の投資ブームの数々に潜む危うさを中心に、暗号資産の投機性や「トランプコイン」騒動、若年層にも人気の新NISAブーム、生成AI(人工知能)関連株の急騰、米国株投資の熱狂、そしてSNSやインフルエンサーによる過剰な煽動のリスクについて、順を追って一緒に見ていきましょう。

 

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暗号資産ブームの光と影…熱狂の裏にあるもの

ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)はここ数年で一般にも知られる存在となり、一攫千金のチャンスを求めて投資する人も増えました。

 

たしかに、暗号資産市場では短期間で価格が数倍、数十倍になるコインも存在し、夢のような話がSNS上で飛び交います。しかし、そのような「おいしい話」には落とし穴があることを忘れてはなりません。

 

先述のトランプコインの事例が示すように、急騰するコインは往々にして急落します。とりわけミームコインや新規に登場した暗号資産は、話題性だけで値段が吊り上がるケースが多く、本質的な価値とはかけ離れた値動きをするのが特徴です。

 

「いつか誰かがもっと高く買ってくれるだろう」という「より愚かな者理論」で価格が成立しているともいわれ、最後にババを引かないようにする“椅子取りゲーム”の様相を呈します。

 

たとえば2021年前後には、イーロン・マスク氏のツイートをきっかけに犬のアイコンで有名なドージコインが爆騰したものの、その後大きく値を下げたことも記憶に新しいでしょう。暗号資産の世界では、一夜にして資産が倍増することもあれば、文字通り「寝ている間に」価値が半減することも珍しくありません。

 

さらに、暗号資産は基本的に規制が緩やかな市場であるため、不正な仕掛けや価格操作も起こりやすい面があります。プロジェクトの実態が乏しいまま有名人が宣伝して価格をつり上げ、後から価値がゼロ同然になる「ラグプル」と呼ばれる詐欺的手法も報告されています。

 

こうした玉石混交の市場において大切なのは、「値上がりしているから」という理由だけで飛びつかないことです。

 

お祭りのような熱気には理性を奪う力がありますが、その熱狂の裏で冷静に状況を見ている人たちが必ず存在します。いざというとき真っ先に売り抜けるのは、熱狂に加わっていない冷静な投資家なのです。

 

●対策

暗号資産自体を完全に否定する必要はありませんが、全資産を注ぎ込むような「一点張り」は厳禁です。どうしても興味があるなら、最悪ゼロになっても生活に支障のない範囲の少額で試すくらいに留めましょう。

 

また、「値上がりの理由が説明できないものには手を出さない」というのは鉄則です。値動きの激しい暗号資産は、資産形成のコア(土台)ではなく、ハイリスク・ハイリターンのサテライト(衛星)的な位置づけにとどめることをおすすめします。

 

ブームに踊らされず、冷静にリスクと向き合う姿勢が大切です。

熱狂する新NISAブーム…若者の参入とその功罪

「投資は怖い」「株なんてギャンブルだ」と敬遠されがちだった日本で、ここ最近にわかにNISA(少額投資非課税制度)が脚光を浴びています。

 

特に2024年から制度が拡充された「新NISA」は大きな話題となり、テレビやネットでも関連特集が組まれるほどでした。実際、2024年1月の新NISA開始以降、証券会社には口座開設の申し込みが殺到。NISA対応の投資信託は「積立投資の定番メニュー」として一躍人気商品になりました。

 

メディアで新NISAを特集するムック本が多数発売されたり、「とりあえずNISA口座を作らなきゃ」と若い世代が金融機関に殺到したりと、一種のブームになったのは記憶に新しいところです。

 

この新NISAブーム、たしかにいい面もあります。従来投資になじみが薄かった20〜30代の若年層が資産運用を始めるきっかけになったのは、大きな成果といえるでしょう。

 

金融庁の調査によれば、2024年3月末時点のNISA口座数は約2,322万口座と、2023年末からわずか3ヵ月で186万口座も増加しました。

 

この増加分には、「いままで投資をしたことがない人たち」が多数含まれており、10代・20代の若者からシニア世代まで幅広い層が非課税の恩恵を求めて動き出したことがわかります。

 

将来の資産形成を考える人が増えたという点で、新NISAは日本人のマネーリテラシー向上に一役買っているともいえます。

 

しかし、一方でブームに踊らされる危うさも指摘されています。経済学者の指摘によれば、「最近のNISAブームが異常なものであることは否定できない」とまでいわれています。

 

なぜなら、新NISAのメリットばかりが大々的に宣伝され、「NISAさえやればお金が増える」という安易な期待が広まっている節があるからです。

 

金融機関が新NISAを熱心にPRするのは、自社の手数料収入につながる商品だからという側面もあります。預金では手数料が取れないけれど、投資信託なら手数料ビジネスになる──そんな思惑で広告が過熱気味になっている可能性も指摘されています。

 

つまり、NISAはあくまで「非課税になる投資枠」という制度に過ぎないのに、それ自体が魔法のように語られてしまうと、本来伴うリスクへの目配りが疎かになりかねません。

 

たとえば、新NISAでは年間最大360万円(積立120万円+成長240万円)という投資枠が用意されています。

 

これを満額使えば非課税メリットは大きいのですが、裏を返せば「最大360万円分ものリスク資産を持つ」ということでもあります。株式市場はいいときもあれば悪いときもあります。過去のデータを見れば、株式投資が5年程度のスパンでは元本割れとなるケースも珍しくありません。

 

どんなにNISAで税金がかからなくても、投資の損失そのものは自己責任です。「投資すればお金は増える」といった安易な前提は誤解であり、むしろ「期待リターンが高いのはリスクが高いから」だという基本に立ち返る必要があります。

 

NISAを活用すること自体は賢明でも、それに浮かれてリスク資産に入れ込みすぎてしまうと、思わぬ痛手を被るかもしれません。

 

●対策

NISAは上手に使えば強力なツールですが、「制度のメリット=投資そのものの成功」ではないことを肝に銘じましょう。ブームに便乗して焦って投資するのではなく、まずは少額から積み立て、長期分散投資の効果を体感することが大切です。

 

NISA枠を埋めなければと無理に高額の投資をする必要はありません。投資先の選定も、「みんなが買っているから」と流行りの商品に飛びつくのではなく、自分の将来設計に合ったインデックスファンドなど堅実な商品を検討しましょう(インデックス投資については後述します)。

 

せっかくの非課税メリットも、元本が大きく目減りしては台無しです。NISAはあくまで「税制面の優遇措置」であり、投資判断の羅針盤は自分自身が持つという姿勢が重要です。

 

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AI関連株の急騰…「これはバブル?」といわれる理由

昨今の株式市場で特に注目を集めたテーマの一つがAI(人工知能)関連株です。2023年に登場したChatGPTを皮切りに生成AIブームが巻き起こり、世界的に「AIが未来を変える」という期待感が広がりました。

 

その結果、米国ではNVIDIA(エヌビディア)などAI需要を追い風に業績拡大が見込まれるハイテク株が軒並み上昇。日本でもAI関連の銘柄が人気化し、一時期はどのメディアを見ても「AI〇〇が株価急騰」といったニュースが踊っていました。

 

しかし、あまりの急ピッチな上昇に対し、市場関係者のなかには「これはITバブルの再来ではないか」と懸念する声も出ています。

 

JPモルガンのストラテジストは早くも2023年7月の時点で「AIへの過剰な期待が生み出す株価上昇は短命に終わる可能性がある」と警鐘を鳴らしました。

 

実際、AIブームに沸く2023年の株式市場では、S&P500指数が大きく上昇するなか、その上昇の大部分が一部の巨大ハイテク企業(いわゆる“マグニフィセント7”)に偏っていたことが確認されています。

 

市場全体が潤っているようで、実はごく限られた銘柄だけが買われている──こうした状況は、過熱のサインとして注意が必要です。専門家たちも「AI銘柄の評価は楽観的すぎる」と指摘しており、投資家に慎重な姿勢を促しています。

 

思い返せば、2000年頃のITバブル(いわゆるドットコムバブル)でも「インターネットが世界を変える」という大義の下、業績が伴わない新興企業まで株価が急騰しました。しかしブームが一巡すると期待先行で買われた株は急落し、多くの投資家が資産を減らす結果となりました。

 

今回のAIブームも、AI技術自体の将来性は本物でも、それが「いますぐ各企業の収益に結びつくか」は別問題です。足元で利益に貢献していないどころか、研究開発費ばかりかさんでいる企業まで株価が何倍にもなるようでは、やはり行き過ぎた期待と見るべきでしょう。

 

実際、2024年後半になるとAI熱も一服し、狂騒的だった関連銘柄の株価が落ち着きを取り戻す場面も出てきました。「ブームが去った後に残るのは実力のみ」というマーケットの鉄則が顔をのぞかせ始めたともいえます。

 

●対策

最新テクノロジーの恩恵を受ける企業に投資すること自体は、決して否定すべきことではありません。ただし、「木が天まで成長することはない」の例えどおり、永遠に株価が上がり続ける銘柄は存在しません。一度冷静になって、その企業の業績や利益成長が株価に見合っているかを確認してみましょう。

 

もし「株価が上がっている理由はAIブームだから」というだけなら、それは非常に危うい状態です。大事なお金を預ける以上、ブームではなくビジネスの実態を見る目を養いましょう。

 

たとえば、一時話題になった企業でも、蓋を開けてみれば「AI関連といいつつ実態はAIとは関係が薄かった」なんてケースもあります。

 

こうした見極めは難しい部分もありますが、投資信託のテクノロジーセクター指数に少額投資して様子を見るなど、直接の個別株投資以外のアプローチでリスクを抑える方法も手段のひとつとして有効です。

 

重要なのは、「熱狂の渦中では1歩引いて考える癖」をつけることです。熱くなって買った銘柄ほど、その後冷や汗をかく展開になりやすい──先人たちの教訓を胸に刻みたいですね。

 

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沸騰する米国株人気…その背景と「人気者ゆえのリスク」

日本の個人投資家のあいだでは近年米国株投資が大人気です。「米国株=世界最強の資産」というフレーズを耳にしたことがある人も多いでしょう。

 

実際、新NISA開始以降はS&P500に連動するインデックスファンドが「オルカン(全世界株)」と並んで積立投資の2大定番メニューとなり、ネット証券のランキングでも常に上位を占めています。

 

背景には、過去10年以上にわたって米国株式市場(特にハイテク株中心)が驚異的なパフォーマンスを上げてきた事実があります。主要指数のS&P500は、日本株や欧州株のみならず、世界の株式指数をも大きく上回る利益を投資家にもたらしてきました。好調な米国経済と企業業績がそれを支えてきたことを思えば、「今後も米国株が強いのでは」と期待するのも無理はありません。

 

しかし、誰もが称賛する「人気者」には思わぬ落とし穴が潜んでいることも事実です。

 

三井住友DSアセットマネジメントのレポートは、現在の米国株について次のように分析しています。

 

「異例の長期好況と企業増益を織り込んで株価バリュエーションには過熱感がある。しかも物色(買い)が巨大ハイテク株に極端に集中している。人気が行き過ぎれば歴史が示す通り予期せぬ反動・調整が起こりかねない」

 

つまり、米国株はたしかに魅力的だけれども、楽観論一色で誰もが信じて疑わない状況になったときこそ注意が必要だということです。

 

株式市場は人気投票の側面があるとはいえ、突出しすぎた人気はしばしばその後の大きな下落につながってきました。特に足元では、ごく一部の大型テック企業(例:GAFAやマイクロソフトなど)に投資資金が集中し、そうした銘柄の株価が指数全体を押し上げている面があります。

 

この偏りが将来修正される局面では、指数にも大きな影響をおよぼすでしょう。

 

さらに、日本の投資家が米国株に投資する際には、為替の影響という追加リスクも見逃せません。

 

米国株が値下がりする局面では、同時に円高が進行してダブルで損失を被る可能性があります。専門家も「米国株が調整する場合、日本人投資家は米株安と円高の“ダブルパンチ”に見舞われる可能性がある」と警告しています。

 

実際、ここ数年の日本人にとっての米国株好調は、極端な円安が後押しした“参考記録”との指摘もあります。たとえば2020年末から2023年にかけてS&P500指数はドルベースで約+66%の上昇でしたが、円建てでは約+139%にもなりました。

 

この差は円安によるもので、裏を返せば将来円高に振れた際には同じ力でリターンが削られる可能性があるということです。

 

●対策

米国株はこれからもグローバル経済を牽引する有力市場であることは間違いありません。ただし、「人気者であるがゆえのリスク」も織り込んでおきましょう。

 

具体的には、一極集中を避けることと為替リスクへの対処です。決して資産のすべてを米国株(S&P500系ファンド)だけに投資せず、日本株や債券、現金、他国の株式などにも分散投資を心がけることが大切です。

 

プロの機関投資家や年金基金でさえ、1つの資産にフルベットするような運用はしません。私たち個人も、「長期の資産形成においては1点賭けを避け、粘り強く賢く投資を続けることが重要」との助言に学びたいところです。

 

また、為替については、ドル資産が増えすぎていると感じたら一部を為替ヘッジありの金融商品に切り替えたり、あるいは積立投資で時間分散することで急激な円高局面の影響を和らげる工夫も有効です。

 

米国株投資は非常に魅力的ですが、だからこそ盲目的にならず、冷静なリスク管理と分散によって「長く付き合う」姿勢で臨みましょう。

SNSとインフルエンサーに要注意…情報過多の時代の落とし穴

スマートフォンとSNSの普及によって、私たちは日々膨大な投資情報に触れるようになりました。Twitter(現X)やYouTubeでは、「〇〇株で億りました!」「いますぐ買うべき〇選」といった刺激的なフレーズが目に飛び込んできます。

 

なかにはフォロワー数万〜数十万を抱える投資系インフルエンサー(最近では「フィンフルエンサー」とも呼ばれます)も登場し、特に若い世代への影響力を強めています。

 

たしかに、彼らの発信するノウハウや速報性の高い情報が投資のきっかけになることもあり、一概に悪い存在ではありません。しかし、その一方でSNS上には玉石混交、真偽不明な情報や悪意あるデマも存在することに注意が必要です。

 

実際、欧米ではSNSを悪用した投資詐欺や市場操作が社会問題化しており、金融当局が取り締まりを強化しています。

 

日本でも2024年7月、証券取引等監視委員会がSNS上で特定銘柄の風説(根拠のない噂)を流布して株価を吊り上げた疑いに対し、初めて課徴金納付命令の勧告を行いました。いわば「SNS発の仕手戦」のような行為で、一部の投資家が利益を得る裏で、信じて後追いした多くの個人が損失を被るケースも出ています。

 

インフルエンサー自身が悪意なく有望株を紹介している場合でも、彼らが提示する情報が常に正しいとは限りません。とりわけ、「断定的な物言い」や「必ず儲かる」といった表現には要注意です。

 

金融の専門家でも将来の株価を正確に当てることはできないのに、SNS上ではまるで予言者のごとく振る舞う人もいます。そうした言葉巧みな投稿に煽られてしまい、本来なら買わないような怪しい商品に手を出してしまうケースも散見されます。

 

また、SNSはどうしても「注目を集める情報」がバズりやすいため、センセーショナルなコンテンツほど拡散します。たとえば、「〇〇株で100万円が1億円に!」「このコインは10倍になる」といった極端な成功談は、多くの場合うまくいった一例を誇張しているに過ぎません。

 

しかし、人間心理としては成功談ばかりが目に入ると、自分もそうなれるのではと錯覚してしまうものです。こうした認知バイアス(成功者の陰に多数の失敗者がいる事実は見えにくい)も働くため、SNSとの付き合い方には冷静さが欠かせません。

 

●対策

SNSやインフルエンサー情報は「話半分」、いや「話1割」程度に受け取るくらいでちょうどいいでしょう。

 

なにか有益なヒントがあればラッキーくらいのスタンスで、決して鵜呑みにしないことです。特に「著名人がおすすめしているから」という理由だけで投資判断をするのは危険だと、業界団体も注意喚起しています。

 

情報の発信源が何者か分からない場合は、その信頼性を必ず確認しましょう。たとえば、その人の過去の発言や実績を調べたり、公的機関・専門家の見解と照らし合わせたりすることが有効です。

 

また、SNS上で得た情報は自分なりに裏付けを取るクセをつけてください。企業の公式IR資料を読む、市販の専門誌で客観的な分析を確認する、といったプロセスを踏むことで、デマに踊らされるリスクは格段に下がります。

 

最後に、SNSのタイムラインを見ているとどうしても気持ちが焦ってしまう……という人は、情報との距離の取り方も工夫しましょう。

 

たとえば、通知をオフにして自分から見に行くときだけ情報収集する、フォローするアカウントを厳選して絞り込む、1日〇時間以上SNSを見ないルールを作る、などです。「見ない勇気」もときには必要です。大事なお金を守るため、情報の洪水に流されない自制心を持ちましょう。

 

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金(GOLD)の安定感…「無国籍通貨」を資産の軸に

ここまで、投資ブームの危うさやリスク管理の重要性を見てきました。ここからは「本質的な資産形成」の軸として改めて注目される金(GOLD)とインデックス投資について考えてみましょう。

 

まずは「有事の金」「究極の安全資産」とも称されるゴールドです。

 

金は古くから価値のある資産として世界中で取引されてきました。現代のように通貨や証券が高度に発達する以前から、人類は金に普遍的な価値を見出し、貯蓄や富の象徴として扱ってきた歴史があります。そのため金は「無国籍通貨」とも呼ばれ、どの国の通貨にも交換しやすく信用力がある特別な存在です。

 

極端な話、日本円しか持っていない人が日本でハイパーインフレに見舞われれば資産は目減りしますが、金を持っていれば、たとえ日本経済が破綻しても金そのものの価値は世界共通で保たれます。

 

金は国家や中央銀行の信用に依存しない「誰の負債でもない資産」なので、株式や債券とは異なる安心感があるのです。各国の中央銀行が外貨準備として金を保有しているのも、その信用力と安定性を買ってのことといえるでしょう。

 

また、金はインフレに強い資産としても知られます。物価が上がり通貨の購買力が下がる局面では、相対的に「実物資産」である金の価値が見直される傾向があります。

 

実際、世界的な金融緩和でインフレ懸念が高まった2020年前後には金価格が大きく上昇しました。さらに「有事の金」という言葉があるように、戦争や金融危機など市場の不安材料が高まる場面でも資金が金に逃避しやすく、価格が上がる傾向があります。

 

こうした特徴から、金は「ポートフォリオの保険」のような役割を果たします。普段はじわじわとしか増えないかもしれませんが、いざ他の資産が下落するときに金が値上がりして損失を和らげてくれる──そんな存在として資産の一部に組み込まれることが多いのです。

 

もっとも、金にもデメリットはあります。利子や配当がつかないため保有して増える資産ではないこと、現物で保有する場合は盗難や紛失リスクがあること、価格が埋蔵量やテクノロジーの変化に左右される可能性があることなどです。

 

したがって、全財産を金にするというのは現実的ではありません。しかし、株式や通貨と値動きの異なる資産として、ポートフォリオの一部に金を組み入れる意義はおおいにあります。

 

特に近年は、純金積立や金ETFなど、少額から金に投資できる手段も整っています。たとえば毎月1万円ずつ純金積立を行えば、ドルコスト平均法で価格変動リスクを平準化しながらコツコツ金を買い増やすことができます。これは将来への備えとして心強い選択肢といえるでしょう。

 

金の持つ「安心感」は、心理的な効果もあります。

 

株式市場が荒れているとき、金価格が上がっているのを見ると「まあ金があるから大丈夫」と落ち着いていられる──そんな声もよく聞かれます。まさに資産形成における精神安定剤的な役割ですね。

 

私たちの日常生活でも、お守り代わりに非常食や緊急資金を用意しておくと安心できるように、ポートフォリオにも金という“非常用シェルター”を備えておくと心に余裕が生まれます。

 

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王道のインデックス投資…長期・分散でコツコツ増やす

最後に触れておきたいのが、インデックス投資と呼ばれる王道の投資手法です。インデックス投資とは、日経平均やS&P500といった株価指数(インデックス)に連動する成果を目指す運用のことで、要は「市場全体にまるっと投資する」イメージです。

 

具体的には、インデックスファンド(またはETF)という金融商品を通じて、市場を構成する多数の銘柄に広く分散投資を行います。

 

投資初心者におすすめなのは、このインデックスファンドを利用した長期の積立投資です。毎月決まった額をコツコツ投資信託で積み立てていけば、価格が高いときには少なく、安いときには多く買うことになり、時間分散の効果でリスクが軽減されます。

 

インデックス投資の最大の利点は、「シンプルでわかりやすく、かつ効率的」な点です。市場平均と同じ値動きを目指すだけなので専門的な知識がなくても取り組みやすく、ファンド1本買うだけで日本中・世界中の企業に分散投資できる手軽さがあります。

 

また、運用コスト(信託報酬など)が低い商品が多く、購入後の手間もあまりかかりません。少額から始められるのも魅力で、証券会社によっては100円から積立設定できるところもあります。

 

まさに、忙しいビジネスパーソンや家事・育児で時間のない人でも続けやすい投資法といえるでしょう。

 

「でも市場平均じゃ大儲けできないんじゃ?」と思われるかもしれません。たしかにインデックス投資は、一発当てて資産を何十倍にも増やすような派手さはありません。

 

しかし、無理なく継続できる仕組みであることがなにより重要です。投資の世界では「継続は力なり」が真理で、長期にわたって積み上げた資産は複利の力で雪だるま式に増えていきます。

 

野村證券の試算によれば、長期の積立投資はリターンのブレ(振れ幅)を低減し、安定したリターン獲得に有効だとされています。実際、日本株に20年間積立投資をしたケースでは、過去のどのスタート時期で見てもマイナスになるケースが大幅に減少しています。30年続ければ元本割れゼロというデータもあり、長期・分散・積立の威力を示しています。

 

インデックス投資はいわば「堅実な農業」のようなものです。一攫千金の狩猟ではなく、毎日コツコツ種を蒔き水をやり、時間をかけて刈り取る。派手さはなくとも、確実に果実を得るための王道です。

 

ブームに翻弄されることなく着実に資産形成をしたいなら、まずはこのインデックス積立から始めるのが賢明でしょう。毎月の収入の一部を先取り貯蓄ならぬ「先取り投資」に回し、自動的に積み立てていく。

 

最初は退屈に思えるかもしれませんが、5年10年と続けた先で振り返れば、その果実にきっと驚くはずです。

 

インデックス投資が初心者のみならず多くの人に支持されるのは、理にかなった戦略であり誰でも実践可能だからです。ブームに惑わされずマイペースに資産形成するうえで、これほど心強い味方はありません。

流行に流されず、自分の軸を持とう

「投資のブームには気をつけよう!」

 

――本記事のテーマをまとめるなら、このひと言に尽きます。暗号資産、新NISA、AI株、米国株……例に挙げたどのブームも、それ自体が悪いわけではありません。むしろそれぞれに魅力やメリットがあり、投資対象として検討する価値は十分あります。

 

しかし、ブームとなった途端に人々はしばしば冷静さを欠いてしまうものです。みんなが右へ行くと自分も右へ行かねば不安になる——これは人間の心理として自然ですが、投資においてはしばしば逆効果になります。

 

流行りの後ろを追いかけて飛び乗った途端に相場の波が引いてしまう、いわゆる「ババ抜き」の最後の1人になってしまう危険を、常に念頭に置きましょう。

 

本質的な資産形成とは、ブレない自分の軸を持つことでもあります。短期的な値動きや周囲の喧騒に振り回されず、自分や家族の将来のために長期で資産を育てる視点を忘れないことが大切です。

 

ゴールドの安定感やインデックス投資の堅実さは、そうした軸を支える両輪といえるでしょう。派手さはなくてもたしかな安心感を与えてくれる資産と戦略をポートフォリオに据えておけば、多少のブームが来ても慌てずに済みます。

 

逆に土台がしっかりしていれば、余裕資金で多少リスクの高いチャレンジをしてみることも可能です。まさに家計全体のバランス感覚が重要なのです。

 

最後に、これはとても大事な心構えですが、「他人は他人、自分は自分」ということです。SNSで誰かが大勝ちしていても、それはその人の物語。あなたにはあなたの資産状況、人生設計、リスク許容度があります。

 

ブームや他人の成功談に心を乱されそうになったら、一度深呼吸して自分自身の投資目的を思い出してください。あなたが経営者であれば事業に役立つ資金作り、子育て中であれば教育資金や老後資金づくり……人それぞれゴールが違うはずです。

 

流行に飛び乗る前に「そのブーム、本当に自分に関係ある?」と問いかけてみるだけでも、余計なリスクを避ける手助けになるでしょう。

 

2025年も折り返し地点を迎え、これから先も新たな投資テーマやブームが次々と現れることでしょう。その度に心躍る気持ちも味わいながら、しかし決して浮かれず、自分のペースで資産形成を続けていきたいですね。

 

「魔法の方法」などなくとも、堅実な資産形成の王道を歩めば、きっと5年後10年後に笑顔になれるはずです。

 

 

 

小川 竜一

コインパレス 公式アンバサダー

アールトラスト・インベスターズ株式会社 代表取締役

〈参考文献・情報源(※一部抜粋)〉
1.日本経済新聞「トランプコイン、最安値に接近」(2025/7/2)
2.Bloomberg「ビットコインの準備資産化、史上最大の詐欺となる恐れ-社説」(2024/12/10)
3.PRESIDENT Online「最近のNISAブームが異常なものであることを否定できない」(2025/02/16)
4.金融庁「NISA口座の利用状況調査」(2024年3月)
5.ダイヤモンド・オンライン「新NISAブームに踊らされた高齢者の末路」(2024/09/04)
6.PreBell So-net「AIバブルの崩壊が始まったのか?市場動向の徹底解析」(2024/02/09)
7.三井住友DSアセットマネジメント「米国株投資の勘所と使用上の注意」(2025/03/06)
8.大和総研「ソーシャルメディア上の不適切な投資情報発信への対策」(2024/10/07)
9.金・貴金属の高額買取「なんぼや」「金投資について解説!基礎知識と注意点」(2025/07/01更新)
10.マネックス証券「インデックス投資とは?メリット・デメリットを解説」
11.野村證券「積立投資は何年やれば効果が期待できるか」(2024/08/27)