久しぶりに顔を合わせる家族との再会は、本来なら安堵と喜びに満ちた時間のはずです。しかし、高齢の親が1人暮らしを続けるなかで、日常の些細な「変化」が静かに積み重なり、ある日、突然“違和感”として姿を現すことがあります。ある女性が直面したケースをみていきます。
「二度と来るな!」温厚だった82歳父が激昂…久しぶりの帰省で53歳娘が絶句した、実家を埋め尽くす“洗った空き容器”の山 (※写真はイメージです/PIXTA)

「性格」ではなく「病気」の可能性も…

山中さんの父親のように、生活空間を圧迫するほど物を溜め込み、捨てることに激しい苦痛や怒りを感じる状態は、「ためこみ症(ホーディング障害)」という精神疾患の可能性があります。単なる「もったいない精神」や「性格の問題」ではなく、脳の機能障害によって「物の価値を正しく判断できない」「整理の意思決定ができない」状態に陥っているかもしれないのです。

 

環境省『令和4年度「ごみ屋敷」に関する調査報告書』によると、全市区町村の38.0%が「ごみ屋敷」事案を認知しており、認知件数は5,224件に達しました。そのうち居住者が65歳以上の高齢者である割合は51.2%と過半数を占めています。 高齢になるほど、配偶者との死別や退職による社会的孤立が深まり、その寂しさを埋めるように「モノ」への執着が強まると考えられています。

 

家族が「汚いから」と一方的に捨てれば、親は自分の存在そのものを否定されたと感じ、余計に殻に閉じこもってしまいます。まずは「病気や老化のサインかもしれない」と冷静に捉え、地域包括支援センターなどの専門家に相談することが、解決への第一歩となります。

 

[参考資料]

環境省『令和4年度「ごみ屋敷」に関する調査報告書』