長年勤め上げ、ようやく迎える年金生活。「ねんきん定期便」の額面を見て、「これなら暮らしていける」と安堵しているのなら、その認識は甘いと言わざるを得ません。年金は非課税の手取りではなく、あくまで「雑所得」。現役時代と同様、そこからは税金や社会保険料が無情にも差し引かれます。意外と知られていない「年金の手取り」の厳しい現実について見ていきます。
 「ふざけるな、取りすぎだ!」年金月16万円・65歳元会社員の“憤り”…妻と娘に「無知なだけ」と冷笑された、残酷すぎる「年金・手取りの真実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金の手取りは「額面の85〜90%」が現実

佐々木さんのように、「年金という制度への不満」と「自身の知識不足」が入り混じり、受給開始後にショックを受けるケースは珍しくありません。一般的に、会社員だった人が受け取る年金の手取り額は「額面の85%〜90%」程度になると言われています。

 

年金から引かれるものは収入によって変わりますが、基本的に以下の4つです。

 

・国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)

・介護保険料

・所得税

・住民税

 

年金の初回振込では、主に所得税(および復興特別所得税)が差し引かれる可能性がありますが、介護保険料や住民税などの社会保険料は、後から天引き(特別徴収)が始まるのが一般的です。また所得税・復興特別所得税は、65歳以上で158万円以上(老齢基礎年金のみの場合は80万円以上)の場合に天引きの対象となります。社会保険料や住民税などは、年金受給開始からすぐには天引きされず、手続きや市町村への確認が完了した後に「特別徴収」として天引きが始まります。それまでは自分で納付(普通徴収)する必要があります。

 

これらを合計すると、佐々木さんの場合、年間で20万円〜30万円ほど(自治体や扶養親族の有無により変動)が差し引かれる計算。結果、手元に残るお金は月14万円台まで目減りします。特に佐々木さんが憤慨した「住民税」は、前年の所得(64歳時の給与所得など)に基づいて計算されるため、年金生活1年目の負担感は極めて重くなります。

 

「年金は非課税の不労所得」ではありません。「雑所得」という立派な課税対象。「俺は無知じゃない」と思っている人ほど、具体的な「手取り額」を計算していないことが多く、いざ納付書を突きつけられたときに「年金制度への憤り」を隠せなくなることも多いようです。

 

[参考資料]

国税庁『高齢者と税(年金と税)』