厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、2024年の離婚件数は約18万5,000件で、そのうち同居期間20年以上の夫婦による離婚は約4万件でした。こうしたなか、長いあいだ一緒に暮らしていた夫婦は、離婚後“想定外の事態”に頭を悩ませるケースも少なくないようです。50歳の夫と48歳の妻の事例をもとに、熟年離婚の原因と家計管理の注意点をみていきましょう。
私の老後はどうするの!? …年収800万円・50歳夫の小遣いは「2万円」家計を支配してきた“鬼嫁”の後悔【CFPの助言】
昇給しても月2万円…「小遣い制」に苦しんできた夫
「離婚、してくれないか」
ある秋の日の午後。いつもより遅い昼食を取ったあと、岸本聡一さん(仮名・50歳)は妻の絵里さん(仮名・48歳)にそう告げました。
――2人は25年前、友人の紹介で知り合い結婚。ほどなくして妊娠が発覚したため、絵里さんは子育てに専念すべく仕事を辞め、以来現在まで専業主婦です。
ひとり息子の大輝さん(仮名・23歳)は今春、大学を卒業したタイミングで就職のために実家を出ており、現在は夫婦2人で生活しています。
岸本家は、夫が外で働き妻が家庭を守るという昔ながらのスタイル。家計管理も絵里さんが担当しており、聡一さんは小遣い制です。給料は全額妻に渡し、絵里さんから改めてその月のお小遣いをもらいます。その金額は結婚以来、一貫して月2万円でした。
聡一さんの現在の年収は800万円。いくら昇給しても小遣いの額は変わらず、過去に何度か値上げ交渉をしましたが、「大輝のためにお金がかかるの」「マイホーム買うんでしょ? 約束したじゃない」などと、その都度なにかしらの理由をつけて応じてもらえませんでした。
不満を感じつつも、子どもの教育費のため、マイホームのためといわれれば、我慢するしかありません。
しかし、そんな我が子も巣立ち、改めて人生の残り時間を意識し始めたとき、聡一さんは考え込むようになりました。
「こんながんじがらめの生活で、本当に自分は幸せなのか?」
自問自答を繰り返して半年、結論が出た聡一さんは、勇気を出して離婚の意志を妻に告げたのでした。
夫の申し出に、妻が見せた“意外な反応”
「……離婚、してくれないか」
これまでことあるごとに節約を強要し、お金に固執してきた絵里さんですから、話し合いは一筋縄ではいかないだろうと聡一さんは覚悟していました。しかし、絵里さんの反応は意外なものでした。
「あっそう。別にいいわよ。離婚しましょう」
この妻の反応には、さすがの聡一さんも拍子抜け。そう出るなら「渡りに船」と、離婚話はスムーズに進みました。