就職氷河期世代の実態

いわゆる就職氷河期世代は、不本意に非正規雇用となった人が多くいた時代でした。

非正規雇用労働者は正規雇用に比べて収入や昇進、福利厚生の面で不利であるため、生活基盤を固められないまま歳を重ねた人も少なくありません。

当時、正社員として就職ができた人でも、企業の経営事情により給料が低く抑えられ、年金や貯蓄の面から老後の資金不足が不安視されています。

清水達彦さん(仮名・50歳)も、いわゆる氷河期世代です。28年前に実家近くの私立大学を卒業しました。就職活動は困難を極め、就職先が決まらないまま卒業したそうです。

卒業後はアルバイトをしながら求職活動を続け、2年後にようやく事務機器メーカーの営業として正規採用されたという経緯があります。

年収450万円でも“悠々自適”な男性

達彦さんの会社は、基本給+成功報酬という給与体系です。そのため、自ら仕事を取らなければ収入を増やすことも昇進することもできません。

ところが、達彦さんは苦労して正社員の座についたにもかかわらず、向上心とは無縁。“誰よりも遅く出勤して誰よりも早く退勤する”という徹底ぶりです。

そんな勤務態度もあってか、達彦さんは出世とは無縁のキャリアを歩んできました。年収は入社以来ほとんど変わらず、450万円ほどです。

しかし、当の本人はどこ吹く風でいたってマイペース。先月誕生日を迎え50歳になりましたが、老後についても「まったく心配していません」と楽観的です。

そんなある日のこと、同期入社の仲間2人と久しぶりに仕事帰りに一杯やることになりました。

ほどよくお酒が回ったころ、同僚の一人が達彦さんに質問します。

「なあお前、なんでそんなに余裕なの? 老後とか心配じゃない?」

「俺たちの退職金なんて雀の涙だし、年金だって十分じゃない。どうするつもりなんだ?」

すると達彦さんは、酔っていたこともあり、これまで周囲に話していなかった驚きの事実を口にしたのです。