退職金という大金を手にした際、その運用に迷う人は少なくありません。 プロの助言を信じて投資に踏み切ったとしても、日々の相場変動による不安はつきものです。しかし、投資の結果において「笑う人」と「泣く人」を分けるのは、実は非常にシンプルな行動の差でした。ある男性のケースを見ていきます。
「銀行員が勧めるなら安心だ」退職金3,000万円をすべて注ぎ込んだ60歳男性。3年後、アプリを見て「ウソだろ…」と絶句したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

資産運用で「笑う人」と「泣く人」の決定的な差

佐藤さんのケースは、結果として「退職金の全額投資」が功を奏した例です。退職金全額を投資に回すというのは無謀であり、真似をするものではありません。しかし、ここには運用で成功する人と失敗する人を分ける重要なポイントが隠されています。 それは「市場に留まり続けたこと」です。

 

金融庁が公表している『つみたてNISA早わかりガイドブック』等の資料でも示されている通り、投資は保有期間が長くなるほど、収益の振れ幅(リスク)が安定し、元本割れする可能性が低くなる傾向があります。 多くの失敗ケースでは、一時的な下落局面で恐怖に駆られ、安値で売却(狼狽売り)をして損失を確定させてしまいます。

 

佐藤さんの場合、銀行の手数料はネット証券と比較すれば高かったかもしれません。 しかし、下落局面で「売らずに待つ」という行動をとり、上昇相場の恩恵を享受できたことが、資産を大きく増やす要因となりました。

 

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)』によると、「1年前と比べて金融資産が増えた」と回答した60代世帯は28.0%。一方で「減った」と回答したのは27.3%でした。

 

投資である以上、「絶対」はありません。しかし、短期的な値動きに一喜一憂することなく、「時間」を味方につける忍耐力こそが、成功の鍵と言えるでしょう。

 

[参考資料]

金融庁『つみたてNISA早わかりガイドブック』

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)』