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定年後の夫に妻が求めているのは「自立」
定年後の再雇用でプライドを傷つけられ、さらに家庭でも居場所を失う……田中さんに限ったことではありません。
定年を迎えたサラリーマンは、まず収入面での現実を直視する必要があります。たとえば大卒サラリーマン、60歳定年前の平均給与は月収で56.2万円、年収で927.0万円。それが定年以降、再雇用で契約社員や嘱託社員といった非正規雇用になった場合、平均月収は34.9万円、年収で544.1万円。月収でも年収でも4割の大幅減となります。多くの男性にとって「自分の価値が下がった」と感じるでしょう。そのストレスを家庭に持ち込みがちですが、これが夫婦関係の亀裂の引き金となります。
ハルメク 生きかた上手研究所が50~79歳の既婚男女600名を対象に行った『夫婦関係に関する調査』の2024年調査をみてみると、「配偶者との離婚を考えたことがある」と回答した男性60代は36.0%。一方で女性60代は54.0%。シニア夫婦において、妻のほうが「離婚を考えるほど不満を募らせている」ことがわかります。
離婚を考えたきっかけを自由記述で聞いたところ ・退職を機に(60歳女性) ・自分が正しいと決めつけ、他人の意見を聞かない(66歳女性) ・給料が少ない(68歳女性) などと、まさに田中さん……という言葉が並びました。
妻にとって、夫の「元部長」という肩書きは家庭生活において何の意味も持ちません。むしろ、過去の栄光にしがみつき、家事もせず、愚痴ばかりこぼす夫は、生活のリズムを乱すストレス源といえるでしょう。定年後に求められるのは、会社での地位ではなく、1人の人間としての「生活力」と、パートナーへの「配慮」。給料が下がったことを嘆くよりも、まずは自分の茶碗を洗う、妻の話を聞くといった小さな変化こそが、夫婦の平穏な老後を守る防衛策といえそうです。
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