厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」によると、日本の全世帯のうち約2%が親へ仕送りをしているそうです。また、仕送りをしている世帯のうち、最も多い年齢層は50代なのだとか。恩返しの気持ちや、親から催促されて仕方なく、親の生活のためやむを得ずなど、仕送りする理由はさまざまでしょう。ただ、なかには仕送りが「思わぬトラブル」を招くケースも……。とある親子の事例をもとにみていきましょう。石川亜希子FPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
どうか夢であってくれ…年収800万円の54歳サラリーマン、年金暮らしの79歳母から届いた「仕送り増やして」LINEに不信感→“アポなし帰省”で発覚した衝撃の事実【FPの助言】
母からの頻繁な“おねだり”に不信感…急遽帰省することに
会社員の伊藤裕之さん(54歳・仮名)は、同い年で会社員の妻・久美子さん(仮名)と、高校生の長女との3人家族です。
都内のマンションに暮らしており、世帯年収は1,400万円(裕之さん:約800万円、妻:約600万円)ほど。毎月の手取りは夫婦合わせて約68万円と、教育費や住宅ローンを抱えているものの、生活に不自由のない暮らしを送っています。
また、裕之さんには、地方に離れて暮らす母・節子さん(仮名・79歳)がいます。節子さんは2年前に夫を亡くして以降、年金月約11万円で1人暮らしをしており、心配した裕之さんはそんな母に対し、月5万円の仕送りを続けてきました。
仕送りを始めた最初のころは、「大丈夫よ」「悪いわね」と気丈なそぶりをしていた節子さんですが、ここ数ヵ月は反応に変化がみられるようになりました。
「今月、ちょっと足りなくて……。もし余裕があったら、仕送り増やしてくれる?」
といった内容のLINEが届くようになったのです。
寂しい思いをさせているという罪悪感もあったため、裕之さんは特に理由を確認することなく追加で送金していましたが、そのお願いは月を追うごとにエスカレートしていきます。
「なんで、そんなに足りないんだ……?」
家計にも影響が出始め、しだいに不信感が芽生えるようになった裕之さんは、妻に相談。
「一度、直接様子を見に行ったほうがいいんじゃない?」
「そうだな。会社に話して、少し時間作ってみるよ」
背中を押されるように、裕之さんは有給休暇を取り、“アポなし帰省”を決断。新幹線と在来線を乗り継ぎ、節子さんの暮らす実家へと向かいました。