老後の楽しみのひとつとして挙げられる海外旅行は、お金と時間に余裕のある“勝ち組シニア”の特権でしょう。しかしながら、加齢による体力・判断力の低下が原因で、思わぬ災難に見舞われるケースもあるようです。70代夫婦が念願のフランス旅行中に体験したとある事例をもとに、高齢者の海外旅行に潜む思わぬリスクとその対策・予防策をみていきましょう。
年金月35万円の70代“勝ち組”夫婦、念願のフランス旅行に出発→花の都・パリで起きた悲劇…「シニアの海外旅行」に潜むリスク【CFPの助言】
シニアの「海外旅行意欲」が高まっている
観光庁「出国日本人数」によると、日本人の出国人数は新型コロナウイルスの影響で2021年に51万人まで激減しました。しかしその後は、2022年に277万人、2023年は962万人、2024年は1,301万人と、急速に回復傾向にあり、2025年はさらに増える見込みです。
若い世代は海外旅行に消極的といわれているなか、シニア世代は「老後の生きがいとして楽しみにしていること」に旅行・レジャーを挙げる人が最も多く、旅行先としては、遠方のヨーロッパを好む傾向にあるようです(※)。
(※)株式会社JTB総合研究所「データから見る「長寿時代」におけるこれからの高齢者の旅行について」より
一方、加齢による体力・判断力の低下により、旅行先でトラブルが起こるケースも少なくありません。
葉子さんのような転倒のほかにも、持病の悪化や熱中症、食あたりなど、現地の医療機関を受診することになる場合があります。また、ちょっとしたケガが帰国後に大事になる危険性も高いようです。
シニアが海外旅行を「安心」して楽しむためのコツ
シニアの海外旅行においてトラブルを防ぐためには、安心への備えが欠かせません。
余裕のあるスケジュールを組む
長時間の移動や過密な日程は、思っている以上に体に負担がかかります。
「1日に訪れる観光地を減らす」「休息日を入れる」など、余裕ある旅程づくりが大切です。
シニア向けのパッケージツアーを利用するのも安心でしょう。
海外旅行保険に加入する
補償内容をきちんと確認したうえで加入しましょう。
病気やケガの際の補償だけでなく、身の回りの物の盗難や破損に対しても補償されます。
混雑状況を確認しておく
人気の観光地では、長時間の行列や人混みは避けられません。混雑していると休憩場所やトイレの確保が難しくなるため、あらかじめ混雑を避ける工夫が必要です。
水と食事に注意
生水や生ものから感染症を起こすことがあります。加熱された安全な食事を心がけましょう。
薬の準備
普段から服用している薬は必ず持参しましょう。薬の英語名をメモしておくと、現地での急な体調不良時にも安心です。