自己破産後も人生は続く…生活再建のポイント

英俊さんは、教育ローンを利用しようと考える前に、教育費と住居費の両立が可能かどうかを考えるべきでした。冷静に考えれば、柳瀬家の家計で子ども2人を私立大学に進学させるのは難しいとわかったはずです。

子どもの進学を考えるのであれば、住宅購入時も教育費を見据えた物件予算や資金計画が必要でした。また、子どもに事情を伝えたうえで最初から奨学金利用を検討していれば、こうした結果にはならなかったかもしれません。

自己破産という結果になった柳瀬さんですが、それで人生が終わりというわけではありません。その後、生活再建をすることになりますが、その際のポイントをまとめました。

(1)自己破産をしても仕事は継続できる
まず、勤務先の会社が自己破産を理由に解雇することは、法律上認められていません。そのため、英俊さんも会社員としての仕事は継続できます。ただし、一部の職種では資格が一時的に制限されますが、破産手続きが終了し「復権」すれば、元の仕事に戻れます。

(2)家は手放して賃貸暮らしに
自己破産を選択すると、自宅を手放さなければなりません。住宅を売却しても住宅ローンの残債が残る場合、その残債も自己破産によって免除されます。柳瀬家は今後、賃貸住宅で再スタートを切ることになります。毎月15万円の住宅ローン返済がなくなれば、家賃を払っても家計には余裕が生まれるでしょう。たとえば家賃12万円の賃貸に住めば、年間100万円近い負担軽減になります。

(3)教育ローンではなく奨学金が選択肢に
教育費については、毎月の借金返済がなくなれば、その分を次男の学費に充てることが可能です。ただし、自己破産後は信用情報に記録されるため、教育ローンの借り入れはほぼできません。次男には奨学金制度を利用してもらい、親は現金で払える範囲で支援するという形が現実的でしょう。

今後同じ過ちを繰り返さないために

「自己破産をする前は、常にお金のことで頭がいっぱい。妻とは険悪になり、息子たちも詳細は知らなかったでしょうが、お金の問題が起きていることは感づいていたようです。結果的にマイホームも手放すことになり、失ったものは大きかった。二度と繰り返さないようにしなければ――」

自己破産後は改めて家計を見直し、毎月の貯蓄額を設定することが重要です。次男の大学卒業後は教育費負担がなくなるため、その分を老後資金に回せるでしょう。

自己破産から5〜10年経過すると、信用情報から記録が消え、再び借り入れができるようになります。しかし、一度破綻した家計を立て直すには、「借りない生活」の習慣化が不可欠です。本当に必要なものだけを、手元にある現金で買う。この基本を守ることで、再び借金に苦しむことを避けられます。

柳瀬家の事例は、決して他人事ではありません。住宅ローンと教育費の重なる時期は、多くの家庭にとって最も家計が厳しくなるタイミングです。住宅購入時には、子どもの教育費ピーク時の家計をシミュレーションしておくこと。

そして「あと少しの辛抱」と思ってカードローンに手を出す前に、まずは家計全体を見直し、必要であれば早めに専門家に相談することが、破綻を防ぐ最善の方法です。

松田聡子
 CFP®