部下を休ませないと“罪人”になるドイツ人
実は社員の「働かせすぎ」は法律の面でドイツの会社の上役にとって命取りになることがあります。というのもドイツの企業の管理職は、どんなに忙しい時期であっても、部下の勤務時間が1日に10時間を超えないように注意しなければなりません。
もしも部下が常時的に1日に10時間以上働いていたことが発覚すると、事業所監督局から企業に対して罰金の支払いを命じることがあるのですが、この罰金の支払いは、会社が払うのではなく、管理職の当事者が「自腹」で払わなければいけないケースがあるからです。
その金額は、以前は最大で1万5千ユーロ(約260万円)でしたが、2023年12月からはなんと倍の3万ユーロになりました。日本円にして約530万円です! なにはともあれ罰金刑がつくぐらいですから、ドイツにおいては「部下を働かせすぎる上司」というのは極悪人の扱いであるわけです。
さらに、「部下の勤務時間のマネージメントができていない上司」というのは勤務評定にも影響し、出世の道が絶たれる場合もあります。だからこそドイツでは「効率、効率」と効率を大事にします。その効率とは、「短期間でどれぐらいの業務を集中的に処理できるか」です。
そして、先ほどの話につながるわけですが、「短期間で集中して成果を出す」「短期間でたくさんの業務を処理する」ためには、個人個人の「プライベート」を考慮しないとできません。通勤に何時間もかかり、疲れ切っている中で無理に出社して仕事に取り組むよりも、疲弊することなく家から仕事をしてもらったほうが集中できます。
子供が理由のホームオフィスにしてもしかり。会社が「〇時から〇時まで仕事をしてください」ときっちり決めたところで、横にギャン泣きの子供がいれば対応しなければいけません。そんなときに会社に働く時間を決められればストレスになります。ここをフレキシブルにすることで、摩擦が減り、全員が自由に働けるというわけです。