2023年、ドイツのGDPが日本を追い抜きました。この現実に、コラムニスト、サンドラ・ヘフェリン氏は「衝撃を受けた」と言います。なぜなら、「ドイツ人は昔も今も『休むのが大好き』」で、日本人とは比べ物にならないほど休暇を取るからです。経済低迷が続く日本、私たちが彼らから学ぶべき“働き方”と“休み方”の本質とは何でしょうか。本記事では、同氏の著書『有休取得率100%なのに平均年収が日本の1.7倍! ドイツ人の戦略的休み方』(大和出版)より一部を抜粋・再編集し、ドイツ在住のヨヘンさんの話から、仕事と休暇のバランスを考えていきます。
「休めない」日本のGDPを逆転、「有休100%」のドイツ…『休みなく働く』美徳の崩壊

日本とドイツ、「有休」の違い

ヨヘンさんはこう話します(※)。

 

※ヨヘンさん(Jochen さん、52歳、男性、家族と同居)、ドイツ在住。週3日の時短で、大手電機メーカーの関連会社で勤務。

 

「日本とドイツの間には文化面でたくさんの違いがあるように『有休』もその一部だと思ってる。日本人は協調性を大事にするし、そういう面では『ほかの人が働いているときに自分が休む』という状態がとても居心地悪いのは理解できる。でもそうはいっても、同じ人間だからね。どんな人間にも時間や体力、精神の限界はあるから『休むことが大事』というのは最終的には否定できないんじゃないかな。僕はkreativ(クリエイティブ、創造的)であることが求められる仕事は、特に『休みなく働く』ことはアウトだと思う。単純作業ならともかく、やっぱり心身ともにリラックスした状態だからこそ『アイディア』が生まれるのだと思う」。

 

このように、「クリエイティブ」な仕事であるほど、休暇が大事だと話していました。そんなヨヘンさんに「一番、幸せを感じる時間」について聞いたところ、「僕は物欲もあまりないし、やっぱり自然の中にいるときが一番幸せかな」とのこと。物欲はなくても、余裕のある生活ができること。自然の中で体を動かす時間があること。仕事と家庭のバランスがいいこと。ヨヘンさん一家を見ていて、こちらも幸せな気持ちになりました。 

仕事のルーティン 

ヨヘンさんに今度は「働いているときのルーティン」について聞いてみました。

 

出典:『有休取得率100%なのに平均年収が日本の1.7倍! ドイツ人の戦略的休み方』(大和出版)
[図表1]ヨヘンさんの1日 出典:『有休取得率100%なのに平均年収が日本の1.7倍! ドイツ人の戦略的休み方』(大和出版)

 

まずは朝のルーティン。ヨヘンさんは6時45分に起き、子供のおむつを替えてから、子供たちの着替えをして、親子ともども歯磨きをして朝食。上の子を幼稚園、下の子をプレイグループへ送るために8時15分には家を出ます。

 

子供たちを預けたあと、ヨヘンさんは自転車に乗ってミュンヘンの中心部へ。このとき、片道40分ほど自転車をこぐことが、いい運動になっていると言います。9時15分ごろに会社に到着すると、まずパソコンのスイッチをオン。それから1杯の水を飲み、コーヒーも飲みながら仕事に取りかかります。

 

この時間が1日の中で最も集中できる時間。自分が担当している商品のさまざまな詳細についてじっくり考えることができるのは、この「午前中の時間帯」です。