「まさか、あいつがこんなに差をつけているなんて…」。定年退職から10年、久しぶりに再会した同期との何気ない会話が、大森さんの心に深い衝撃を与えました。同じ会社で同じような退職金を受け取ったはずなのに、なぜこれほどまでに資産に差が生まれてしまったのか。その答えは、退職金の運用方法にありました。物価高が続く今、現金で眠らせているだけでは実質的に資産が目減りしていく現実を、多くのシニア世代が実感し始めています。退職金の運用はどうしたらよいのか、FPの青山創星氏と一緒に考えてみましょう
(※写真はイメージです/PIXTA)
俺は1億円持ってるから…72歳元会社員、酒の席で思わず絶叫。〈退職金3,000万円〉同期と条件は同じだったのに「とんでもない大差」がついたワケ【FPの助言】
「俺は1億円持っている」同期の衝撃発言に絶句
居酒屋の個室で、大森雄一さん(仮名・72歳)は10年ぶりに元同僚の木下さん(仮名・71歳)と顔を合わせていました。お互いの近況を報告し合う中で、話題は自然と老後の資金に移っていきました。
「大森、お前も退職金は3,000万円くらいもらったよな? 俺もそのくらいだった」
「そうそう、でも物価も上がってるし、年金だけじゃ厳しいよな」
木下さんの問いに、そう愚痴をこぼした大森さん。共感してくれると思っていましたが、次に木下さんが何気なく言い放った一言で大森さんの心臓は止まりそうになりました。
「俺、退職金のうち2,000万円を投資に回したんだけど、今じゃ4倍以上に増えてるよ」
大森さんの手から、ビールジョッキが落ちそうになりました。
「さすがにウソだろ!?」
思わず叫んでしまった言葉に、木下さんは余裕の笑顔を浮かべます。
「本当だよ。証券口座の画面を見せようか?」
木下さんは自ら詳細を語りだしました。退職金のうち2,000万円をS&P500のインデックスファンドに投資し、今では年9,000万円ほどに。生活は年金とそれまでに貯めたお金で何とかなっているので、残りの1,000万円の定期預金などと合わせると、総資産は1億円を超えていると――。
「アメリカ経済の成長力のおかげだよ。AppleもMicrosoftもGoogleも、この10年で株価が何倍にもなったからね」
この時、大森さんの頭の中では、自分の銀行預金の残高がよぎっていました。減っていく一方で増えることなんてない……木下さんとはあまりに大きな差が生まれていました。