「まさか、あいつがこんなに差をつけているなんて…」。定年退職から10年、久しぶりに再会した同期との何気ない会話が、大森さんの心に深い衝撃を与えました。同じ会社で同じような退職金を受け取ったはずなのに、なぜこれほどまでに資産に差が生まれてしまったのか。その答えは、退職金の運用方法にありました。物価高が続く今、現金で眠らせているだけでは実質的に資産が目減りしていく現実を、多くのシニア世代が実感し始めています。退職金の運用はどうしたらよいのか、FPの青山創星氏と一緒に考えてみましょう
(※写真はイメージです/PIXTA)
俺は1億円持ってるから…72歳元会社員、酒の席で思わず絶叫。〈退職金3,000万円〉同期と条件は同じだったのに「とんでもない大差」がついたワケ【FPの助言】
同期との資産格差から学ぶ現実的な投資戦略
同期との再会で明らかになった資産格差は、確かに投資の威力を示しています。しかし、この成功例から学ぶべきは単純な「投資のススメ」ではありません。
【重要な教訓】
• 投資の両面を理解する:過去10年は歴史的な上昇相場だったが、今後も同様とは限らない
• 失われた30年の教訓:日本のように長期低迷する可能性も十分に考慮する
• 精神的リスク許容度の測定:「投資額が半分になっても3年間我慢できるか?」を自問
• 夜眠れるかテスト:投資後、値動きが気になって眠れないなら投資額が過大
• シニア世代の制約を認識:手元資金と年金収入のみで、給与による補填は不可能
• 生活防衛資金の確保:月間生活費の3~5年分は絶対に投資に回さない
• 段階的なアプローチ:総資産の5~10%から始め、精神的負担を確認しながら調整
• 投資の両面を理解する:過去10年は歴史的な上昇相場だったが、今後も同様とは限らない
• 失われた30年の教訓:日本のように長期低迷する可能性も十分に考慮する
• 精神的リスク許容度の測定:「投資額が半分になっても3年間我慢できるか?」を自問
• 夜眠れるかテスト:投資後、値動きが気になって眠れないなら投資額が過大
• シニア世代の制約を認識:手元資金と年金収入のみで、給与による補填は不可能
• 生活防衛資金の確保:月間生活費の3~5年分は絶対に投資に回さない
• 段階的なアプローチ:総資産の5~10%から始め、精神的負担を確認しながら調整
木下さんの成功は確かに羨ましいものですが、同時に「運」の要素も大きかったことを忘れてはいけません。もし投資開始時期が2000年のITバブル時や2007年のリーマンショック前だったら、短期・中期的には厳しい状況を経験していた可能性があります。
しかし、最も重要な教訓は「知識の格差」が資産格差を生み出したという事実です。木下さんは息子の助言という幸運な機会により、投資の必要性とリスクについて学ぶことができました。一方の大森さんは、そのような学習機会に恵まれませんでした。この「教育格差」こそが、10年後の数千万円単位の資産格差を決定づけたのです。
大切なことは、まず「知る」ことです。 知った上で「リスクを取りたくないから投資はしない」と判断するのも、「多少のリスクを取ってでも資産を成長させたい」と考えるのも、どちらも正しい選択です。しかし、知らないまま時間が過ぎ、後から知って後悔するのが最も避けるべき事態なのです。
大切なのは、自分の年齢、資産状況、そして最も重要な「心のリスク許容度」に応じた現実的な戦略を立てることです。「夜眠れなくなるような投資」は絶対に避け、「最悪半分になっても生活に支障がない範囲」で始める慎重さが、シニア世代には特に重要です。
大森さんの体験を教訓としながらも、まずは投資について正しく学ぶことから始めてみてはいかがでしょうか。知識を得た上での選択こそが、後悔のない人生につながるのです。
ファイナンシャルプランナー
青山創星