親が全部背負い込まない…専門家のサポートと線引きが生き残りのカギ

では、石村さん夫婦のような状況に陥ったとき、どう対処すればよいのでしょうか。 ファイナンシャルプランナーとして、次の3つのポイントをお伝えします。

1. 公的支援制度を最大限活用する
まず確認すべきは、障害年金の受給資格です。うつ病などの精神疾患でも、一定の基準を満たせば支給対象になります。就労期間中に発症した場合は、厚生年金加入中の病気として「障害厚生年金」を申請できる可能性があります。 また、自立支援医療制度を利用すれば精神科通院の医療費が軽減され、各自治体の生活困窮者自立支援制度では、就労支援や家計相談を無料で受けられる場合もあります。 「すべて親が面倒を見るべき」という思い込みを捨て、まずは使える制度をすべて調べましょう。

2. 専門家と連携し、本人の自立を促す
親が食事の世話から金銭管理まですべて担ってしまうと、かえって子どもの依存を強めます。精神保健福祉士などの専門家と連携しながら、就労移行支援事業所や社会とのつながりを取り戻す場としての地域活動支援センターなどを活用し、段階的に社会復帰を目指すことが大切です。「親が元気なうちに、少しでも自立の道筋をつくる」という視点で行動しましょう。

3. 自分たちの老後資金に「線引き」を設ける
最も重要なのは、親自身が倒れないことです。「子どものためなら」と老後資金を使い果たせば、最終的に親子共倒れになりかねません。具体的には、「ここまでは支援できるが、これ以上は無理」という上限を設定すること。 たとえば「月5万円まで」「総額300万円まで」など、明確なラインを決め、子どもにも伝えましょう。

冷たいようですが、これは親子双方を守るための命綱です。子どもの不調は親にとって何より辛いものです。しかし、親が共倒れしては元も子もありません。

「自分たちの老後も守る」という視点を持ちながら、制度と専門家の力を借りて、家族全体で持続可能な生活を目指すことが何より大切です。

三原 由紀
プレ定年専門FP®