50代を迎え、汗が止まらないホットフラッシュや、原因不明のめまいに、初めて“老い”の現実を突きつけられる女性は少なくありません。さらに、ふと見渡せば60代おひとりさまの「3人に1人は貯蓄ゼロ」という厳しいデータも。「健康」と「お金」、そして「孤独」。人生の後半戦に押し寄せる巨大な不安の波を、どう乗り越えればいいのでしょうか。獅子にひれ氏の著書『定年が気になりはじめた50代おひとりさま女子たちのトリセツ』(ごきげんビジネス出版)より、人生後半を過ごすにあたり必要な準備を紹介します。
「1日1歩も外に出ない、誰とも話さない日があります」…夫に先立たれ、郊外団地でひとり暮らし。スーパー閉店が生んだ〈つながり難民〉の切実な実態 (※写真はイメージです/PIXTA)

2.仕事の準備

2つ目は「人生最後の仕事を考える」です。働く目的に「生活をするためにお金を稼ぐ」と考えるのは当然で、大切なことだと思います。そこに不安がないよう準備することは必要です。教育資金・住宅資金・老後資金は「人生の3大資金」といわれています。50代になると、「老後資金」のことをいよいよ考えるようになります。

 

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」の結果によると、金融資産を保有している60 代おひとりさまの保有額は、貯蓄額平均2240万円、中央値は1100万円です。金融資産を保有していない割合は33.3%で、3人に1人は貯蓄がゼロ、という結果です。

 

この結果に対し、平均以上と安心する人、平均以下と不安になる人、いろいろだと思いますが、これはあくまで平均した数字にすぎません。老後に必要と考えられるお金は、実は人それぞれです。大事なのは、自分の現在地と必要に応じた対応を計画し行動することです。50代からの資産形成は決して遅すぎることはありません。むしろ具体的な行動を考えはじめるのに適した時期だといえます。

 

老後のことを考えるのは、50代の私たちにとっては切実なテーマです。一方で老前、つまり「現在」はどうでしょう。漠然とした老後生活への不安から、ひたすらお金を稼ぐことを優先してしまい、その結果、無理をしたり、大切な何かを犠牲にしたり、ストレスフルな時間を多く過ごしているとしたら……そして、ようやく老後と思ったときに病気にでもなったら、これはなんだか本末転倒な気がします。

 

私の場合、病気や離職期間を経て「働くことの意味」を根底から考えることになりました。これまでも会社員という枠組みのなかで好きな仕事をしてきたと思っています。ですが、仕事の目的はどちらかというと「好きだから」よりは「生活のため」のウェイトが大きかったでしょうか。そのため時に無理もしてきたと思います。

 

介護などの必要がなく健康的に生活できる期間、いわゆる「健康寿命」についてご存知の人も多いと思います。女性の場合、75.45歳(2022年時点)で50代の私たちにとって、この先20~25年です。長いですか? それとも短く感じますか?

 

60歳が定年だった一昔前なら、50代は定年を控え、第一線から離脱していく年代でした。ですが現在は、年金を受け取る時期も定年の年齢も65歳に伸び、この先さらに伸びる可能性があります。「働く期間が長くなるのなら、自分のやりたい、やりがいのある仕事に就きたい」とセカンドキャリアを考える人が増えてきたのも、そういう社会背景があるからです。

 

自分に残された「健康で働ける時間」をどのように過ごしたいか。私の場合、必要な老後資金は備えながら、この先を見据えて、より「自分らしく働く」ために、仕事内容や働く環境を見直し、キャリアチェンジを選択しました。漠然と考えるよりも、具体的な計画を立てることで、やりたいことや興味のあることをいまからでも実現できると思えるようになったのです。新しいチャレンジも50代のいまだからできる、そう実感しました。

 

何かをはじめるのに遅いことはないけれど、早ければ早いほどいいと思います。これまで働き続けてきたからこそ、その集大成となる「人生最後の仕事」について、あらためて考えてみてはいかがでしょうか。