核家族化が一般的となった昨今、離れて暮らす親とはどのくらいの頻度で顔をあわせていますか? 電話などでは定期的に連絡をとっていても、直接会うとなると、お盆や年末年始、GWなど、年に数回という人も多いのではないでしょうか。76歳母と48歳娘の事例をもとに、離れて暮らす親子のあいだに潜む思わぬリスクと、その回避策をみていきましょう。石川亜希子CFPが解説します。
年金暮らしの私でも払えるのよ…年金月14万円の76歳母から頻繁に届く“怪しいおすそ分け”。不審に思った48歳娘の「アポなし帰省」で判明した〈最悪の事実〉
年金暮らしでも払えるのよ…母が“爆買い”できた理由
総務省の「2024(令和6)年家計調査報告」によると、65歳以上の単身無職世帯の場合、実収入から税金や社会保険料などを差し引いた「可処分所得」が平均で約12万1,000円。一方、消費支出は約14万9,000円で、毎月約2万8,000円の赤字となっていることがわかります。
つまり、佳代さんの年金額では、生活費を差し引くと、自由に買い物できる余裕はほとんどないはずです。
「毎月1万円ずつ払えばいいって言われたの。だから年金暮らしの私でも払えるのよ」と佳代さんは言いますが、カード明細には案の定「リボ払い」の文字。残金は約70万円に膨らんでいます。
「ねえお母さん、リボ払いって支払いを先延ばしにしてるだけなのよ。しかも元金はなかなか減らないし、利息ばかりが増えていくの。だから、もうやめて……!」
相談件数“過去最多”…高齢者の「ネット通販トラブル」が増えている
消費者庁「令和5年版消費者白書」によると、2022年(令和4年)に寄せられた高齢者のインターネット通販に関する消費生活相談は約5万件で、過去最多となりました。
年齢別にみると、65歳から74歳までの相談件数が高齢者全体の約3分の2を占めています。また、健康食品やスキンケア化粧品などの「定期購入」に関する相談では、65歳から74歳までの割合が約8割にのぼっています。
つまり、「通販のトラブル」といってもいわゆる昔ながらの悪質商法とは異なり、「よさそうだったからつい買いすぎてしまった」「解約の方法がわからない」といった、「定期購入」の仕組みを十分に理解しないまま利用しているケースが多いということです。
なお、年齢が上がるにつれネット通販に関する相談の割合は減少し、85歳以上では2割ほどでした。ただ、その代わりに「テレビショッピング」での定期購入に関する相談が増加しています。インターネットでもテレビでも、根本にある問題は同じです。
優子さんは冷静に母親から話を聞くうち、この問題の背景が見えてきました。
「夜は誰とも話さないから、スマホを眺めていることが多いのよ。するとほら、“あなたへのおすすめ”って出てくるでしょう。なんだかうれしくなっちゃって」
スマホの通知や広告は、孤独や不安を感じやすい深夜の時間帯に、そっと心に入り込んできます。また、「お得」や「限定」という言葉が承認欲求をくすぐり、購買行動を誘発するのです。
佳代さんのネットでの買い物は、いつしか「人とのつながり」の代わりになっていたのでしょう。
優子さんは「母を思いやれていなかった」と、深く後悔しました。