核家族化が一般的となった昨今、離れて暮らす親とはどのくらいの頻度で顔をあわせていますか? 電話などでは定期的に連絡をとっていても、直接会うとなると、お盆や年末年始、GWなど、年に数回という人も多いのではないでしょうか。76歳母と48歳娘の事例をもとに、離れて暮らす親子のあいだに潜む思わぬリスクと、その回避策をみていきましょう。石川亜希子CFPが解説します。
年金暮らしの私でも払えるのよ…年金月14万円の76歳母から頻繁に届く“怪しいおすそ分け”。不審に思った48歳娘の「アポなし帰省」で判明した〈最悪の事実〉
親の「老後資産」を守る3つの対策
優子さんのように、離れて暮らす親がいる現役世代は少なくありません。そんな親の暮らしを支えるために今日から始められる対策としては、下記の3つが挙げられます。
1.家計の「見える化」を一緒に行う
月に1度、通帳や明細を一緒に確認し、支出を「見える化」しましょう。
なお、明細は近年ペーパーレス化が進み、Web上での確認になっていることが多いですが、紙での郵送に戻すことで「こんなに使っていたんだ」と実感しやすくなるかもしれません。
2.支払方法を「単純化」する
クレジットカードやスマホ決済を複数利用すると、支出が分散して管理が難しくなります。高齢者の場合「1枚のカードと口座引き落とし」程度に絞り、スマホ決済やリボ払いは使わない仕組みを作りましょう。
3.「注意する」のではなく「寄り添う」
親に対して「もうネットで買い物しちゃダメ!」と頭ごなしに叱るようなやり方は逆効果です。買い物は本人にとって大きな楽しみのひとつであり、先述のように孤独を癒す手段でもあります。
したがって、「注意する」のではなく「寄り添う」姿勢が重要です。買い物をするときはひと声かけてもらうなど、購入にひと手間を加える工夫も有効ですが、なにより日頃からのコミュニケーションを増やすことが、最大の防止策となります。
親子の「その後」
優子さんはそれ以来、母と頻繁に連絡を取り、ときには子どもと一緒にビデオ通話をして、家族の絆を深めています。
佳代さんはいまもインターネットで買い物をしていますが、最近では「これ、いる?」の代わりに「これ、買ってもいい?」と事前に連絡が来るようになりました。
クリックの前に、ほんのひとことでも誰かと会話する――それだけで、家計のバランスは少しずつ整っていきます。こうした小さなコミュニケーションの習慣が、親の老後を守ることにつながるのではないでしょうか。
石川 亜希子
CFP