がんをはじめ、病気になるとローンや教育費、維持費などが生活費を圧迫します。そんななかでも、「将来のために資産形成したい」「子どものために貯めたい」と考えたとき、できることは、支出の見直しでしょう。そこで、看護師FPの黒田ちはる氏の著書『【図解】医療費・仕事・公的支援の悩みが解決する がんとお金の話』(彩図社)より、医療費を工面するための「支出の見直し」について紹介します。
「もう支払えない」となる前に…がんになった→治療費を確保するための〈住宅ローン〉〈自動車ローン〉の考え方【看護師FPが解説】
車の費用を考え直してみる
ふだん使い慣れているものを改めて意識することは少ないですが、いざ考えてみると、意外な調整の方法が見つかるかもしれません。
がん治療中の車の維持について考える
自家用車の維持費は年間40万~50万円ほどかかることが多く、医療費や住宅費に次ぐ大きな支出となることもあります。また、体調面で運転が一定期間難しくなることもあるため、維持するかどうかを悩まれる患者さんも多いです。
そのため、ご相談では具体的なシミュレーションをしながら一緒に考えています。自家用車は手放したとしても、代用できる交通手段がいくつかあります。体調や生活環境に応じて、次のような自家用車以外の交通手段を活用することもひとつの選択肢です。
・タクシーやバス、電車などの公共交通機関
・カーシェアリング(最近は設置場所が増えている)
中には、一時的に車を手放すことで、医療費や生活費の負担を軽減できるケースもあります。今後の治療や生活を考えながら、自分にとって最適な方法を検討してみましょう。
ここでは患者さんの体調も考えたうえで、一時的に車を手放したというケースをご紹介したいと思います。
Aさんは夫婦二人暮らしで、「現在は毎日の放射線療法のため車は必須で、終了後は月数回の通院治療以外にはほとんど使用しない。でも何かあった時のために維持しておきたい」というお考えでした。そこで、ご夫婦の車の年間費用を計算してみました。
結果、「ここまでかかっていたとは気づかなかった」「この費用を治療費に回せたら、楽になるのかな」ということで、タクシーやカーシェアリングなどの費用や使い勝手を比べ、一時的に自家用車を手放すことを検討することになりました。
収入が減って治療費がかかる時、どこを優先していきたいのかはご家族のお考えや患者さんの体調、そして今後の治療方針にもよります。どうしても自家用車が必要な場合は、もちろんそのままで構いません。しかし、他の方法でも対応できる可能性があるかもしれませんので、治療スケジュールや体調に合わせた選択肢を考えてみるのも良いでしょう。
ちなみに、最近増えている残価設定型のローンは、下取り価格である「残価」を設定して返済を据え置くことにより、月々の返済額を抑えられるローンです。ただし、月々の支払いだけでなく、最後に100万円近い残価を支払うことになるようなケースもあります。そうなった場合どうするのかも考えつつ、車を維持し続けるかどうかを検討しているというのが実際のところです。
黒田 ちはる
看護師FP®
