傷病手当金の注意点

傷病手当金は申請後も注意が必要です。家族や専門家と相談しながら家計を管理していきましょう。

「申請したら終わり」ではない

傷病手当金は、申請したら終わりではありません。

今までの給料と比べて減る方も多いので、安心して休めるよう、これからご説明する2つの注意点についても考えておくと良いでしょう。

ただ、これから治療を始める患者さん自身にとっては、ここまで考えるのは大変なことです。このあたりを心配されてご相談に来られるのは、ほぼ患者さんのご家族です。ご家族と一緒にお金のことを共有しながら考えていけると良いですね。

一人暮らしの方は、すべてを一人で抱え込まずに、専門家(FP)を活用していくことも安心して休職できる早道なのではないでしょうか。

注意点①口座入金まで時間がかかる

がん患者さんの場合、手術や抗がん剤治療が始まる前から痛みや倦怠感、貧血などの症状があり、体調が優れない方もいます。

しかし、多くの方は治療開始前までは仕事ができる状態であるため、実際には治療が始まってからの体調の変化により休職し、傷病手当金を申請するケースが一般的です。

乳がん治療で仕事を休んだAさんは、右上の図のような流れで傷病手当金の受給までに時間がかかりました。

[図表]出典:『【図解】医療費・仕事・公的支援の悩みが解決する がんとお金の話』(彩図社)
[図表]傷病手当金の申請の流れ(Aさんの場合)[図表]出典:『【図解】医療費・仕事・公的支援の悩みが解決するがんとお金の話』(彩図社)

治療を開始し、11月18日から仕事を休み始めた時点から傷病手当金の申請をする場合、主治医に「治療の影響で働くことが難しかった」という証明を作成してもらい、職場でもこの期間の欠勤を証明する書類を作成してもらった後、健康保険組合に申請したのは治療開始から約1ヵ月後(12/21)でした。その後、3週間の審査を経て、実際に傷病手当金が口座に振り込まれたのは治療開始から約2ヵ月後(1/16)でした。

申請後には審査が行われますが、その期間は健康保険組合によって異なります。早いところでは2週間前後で審査が完了する場合もありますが、再発や転移のケースでは前回の情報との関連性を確認するため、審査に時間を要することもあります。

また、書類に不備があったり、不透明な部分について問い合わせが発生したりすると、その対応に時間がかかることもあります。

そのため、申請の流れや必要書類を早めに確認し、スムーズに手続きを進めることが大切です。また、治療開始後の生活費の見通しを立てておくことで、経済的な不安を軽減できるでしょう。