サラリーマンを辞めて起業を決意し、見つけたビジネスは物販。しかし、右も左もわからない状態で数多の試練が襲い掛かる――。30歳目前でサラリーマン生活に終止符を打ち、"どこでも生きていける"ための個人事業をスタート。現在は世界を旅しながら2児を育てる森翔吾氏の著書『すべては「旅」からはじまった 世界を回って辿り着いた豊かなローコストライフ』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編して、森氏が自分探しの旅を始めるまでの経緯をご紹介します。
29歳で脱サラ、起業成功で「時間とお金」を手に入れた元会社員。さらなる富も狙えたが…「ビジネス拡大」を選ばなかったワケ
個人事業でビギナーズラック?
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起業をしよう。そう決めてフィリピンの語学留学から戻った後も、どんな仕事をすればいいのか、具体的な答えは見つからなかった。
焦っても仕方がないので愛知県の実家に戻り、しばらくのんびり過ごすことにした。何しろ仕事をしていないので収入はゼロ。30歳で実家に戻って家族と同居は少し恥ずかしくもあったが、ほかに選択肢がなかった。しかし、仕事のヒントは、意外なところに転がっているものである。
ある日、欲しかった一眼レフのカメラをネットで安く見つけた。同じようなカメラの価格をAmazonで調べてみると、かなり高いものが多い。この価格差はなんだろうと思い、安く見つけたカメラを買ってみた。「本物だろうか?」という疑いをもったので、自分で使って性能を確認してみたかったのだ。とくに問題はない。そこで、もう一台新品を購入してAmazonで売ってみることにした。すると、すぐに売れて1万円ほどの利益が出た。
単なるビギナーズラックだと思うが、物販とはこれほど簡単に利益が出るものなのか!と驚いた。同時に、Amazonの販売システムにも驚いた。商品の外箱にバーコードを貼ってAmazonの倉庫に送るだけで、お客さんへの販売から発送・受注管理からクレーム対応、返品処理まで行ってくれるため、このシステムを使えば、世界中どこにいても収入を得ることができる。
さらにAmazonの場合は、プライム会員になると、購入した当日や翌日に商品が届くサービスが受けられるため、他のサイトより値段が少しばかり高くても、購入する人が多いという特徴がある。僕自身も、商品がすぐに届くことに気をよくし、モノを買いまくっていたAmazon中毒だった。
そこで売れそうな商材を探し、Amazonのシステムを使って販売してみることにした。これが、僕が最初に始めたビジネスだった。カメラを仕入れて、Amazonで売る。簡単なことだが、商品の仕入れが少なければ商機を逃し、仕入れが多すぎてなかなか売れなければ在庫を抱えることになる。
ビギナーズラックは続かず…
輸入販売をする商社で5年以上働いていたのに、サイトで商品紹介のキャッチコピーを書いていただけで、仕入れについての知識はゼロ。手探りで始めた個人輸入は、ビギナーズラックで滑り出しこそ好調だったが、すぐにトラブルに見舞われた。「すり替え詐欺」に遭ったのだ。
僕が販売した一眼レフカメラが、代金が振り込まれる前になんらかの理由で返品手続きが行われ、戻ってきた。箱を開けてみると、中が空だった。コンビニ受け取りのコンビニ返品で、購入者は偽名を使っていたため、完全な詐欺行為である。
コンビニの防犯カメラを調べれば、犯人は突き止められたと思う。しかし、Amazonのサポートセンターに相談してもラチがあかず、損失も補填してもらえず、結局、泣き寝入りするしかなかった。
損失額は約40万円。当てにしていた1カ月以上の給料が、一瞬にして消えてしまい、僕はかなり落ち込んだ。
ただし、40万円もの高額商品を倉庫に預けていたのは自分のミスだ。高額商品は自分で注文管理・発送したほうが良いということを後から教えてもらった。
ちょうど通販で、「すり替え詐欺」が流行り始めた頃だった。まさか自分がカモにされるとは思っていなかったが、リスク回避のための知識は必要だ。当時は同じようなビジネスをやっている人がすでにいて、勉強会やグループコンサルティングなどを行うセミナーがあったので、参加して情報を得ることにした。
毎月1回、50人ぐらいが集まって物販に関する勉強をした後、飲み会をしながら情報交換をするようなセミナーで、授業料も、コンサルフィーもかなり高額だった。
けれども、右も左もわからなかったこの時期に、相談できるコンサルタントや同じような仕事をしている先輩と知り合えたことは、ありがたかった。自分ひとりで新しいビジネスに挑戦する不安や孤独から救ってもらえたからだ。