サラリーマンを辞めて起業を決意し、見つけたビジネスは物販。しかし、右も左もわからない状態で数多の試練が襲い掛かる――。30歳目前でサラリーマン生活に終止符を打ち、"どこでも生きていける"ための個人事業をスタート。現在は世界を旅しながら2児を育てる森翔吾氏の著書『すべては「旅」からはじまった 世界を回って辿り着いた豊かなローコストライフ』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編して、森氏が自分探しの旅を始めるまでの経緯をご紹介します。
29歳で脱サラ、起業成功で「時間とお金」を手に入れた元会社員。さらなる富も狙えたが…「ビジネス拡大」を選ばなかったワケ
仕事を輸入貿易事業へと拡大
個人事業を始めて3カ月ほどすると月商200万円(月収は15万円程度。利益率はかなり低い)になり、業績は順調に伸びていた。しかし、国内の商社から20個、30個と細々した商品を仕入れて売る仕事が楽しいかと聞かれたら、「NO」だった。
輸入商社で社員として仕事をしていたときは、中国からの輸入がほとんどだったが、それでも世界とのつながりを感じることができた。ところが自分で事業を始め、仕事が国内に限定されるようになってからは、世界が急に狭くなり、息苦しさを感じるようになっていたからだ。
「輸入ビジネスができないだろうか……」。そんなことを考えながら海外のオークションサイト「eBay」で自分用の「USキーボード」を購入したときだった。
「もしかしたら、これは売れるのではないか!」と閃いた。
自分は、日本語表示がない「USキーボード」の文字配列が好きで使っているが、同じような好みの人はいるはずだ。そう思い、手始めに「USキーボード」を10台購入して日本のAmazonで販売してみた。すると、あっという間に完売した。20台、50台、100台輸入しても順調に売れていき、やがて1000台単位のロットで仕入れをさせてくれる取引先と出会うことができた。
当時の輸入ビジネスは、アメリカのAmazonから仕入れて並行輸入品として販売しているケースがほとんどだった。ところが詳しく調べてみると、オークションサイトの「eBay」のほうが安値で、しかも大量に商品を販売しているセラーが多かった。
ちなみに、僕が最初に1000個以上の取引をしたセラーさんは、アメリカのテキサス州でシステムエンジニアをしている普通のサラリーマンで、パソコン周辺機器を激安で仕入れられるコネを持っていた。こんな人に巡り会えたのは、本当にラッキーだったと思う。
Amazonから仕入れるのではなく、ライバルが少ない「eBay」に絞って仕入れをすればいけるのではないか。僕はそう考えて、輸入ビジネスにチャレンジを始めた。もちろん最初は大変だった。売れそうな商品がなかなか見つからない、仕入れたが売れない、届いた商品が新品ではなくボロボロだったなどのミスを繰り返した。
順調だったが500万円の大損をする
でも、結局はコツコツやるしかない。3カ月ほどすると、Amazonで情報公開している世界中の取り扱い商品の売り上げランキング(有料ツール)を検索して、売れ筋商品を仕入れられるようになってきた。そこで、国内物販から手を引き、輸入ビジネスに集中することにした。
輸入物販に切り替えたのは、こんな理由からだ。
●オンラインで完結できるので、仕事内容は今までと変わらない。
●100個、1000個単位のロットで仕入れられるので、仕入れが今までよりラクになる。
●ちょうど、外注で海外からの商品受け取り、納入、検品をやってくれる会社を見つけたため、自分は商品リサーチと商品管理だけを行えばいい。
●海外で仕事をするという夢を、そろそろ叶えたい!
たとえば、タブレット用のタッチペンを輸入し販売する。これが日本で売れた。そこで、アメリカでも販売しようと思い、安い仕入れ先を見つけ、以前から関係があった取引先の人に販売までお願いした。その人とは直接会ったこともあったし、何度かオンラインでも会話をしていたのだが……、ある日、その人と連絡が取れなくなってしまった。
持ち逃げされたのだ。損失額は500万円。もちろん、個人事業を始めてから最大の損害だった。ショックで数カ月は立ち直れなかった。