「良好な親子関係」がどのような状態を指すのか、それは家庭によって千差万別でしょう。ただし、親から子へ、はたまた子から親への「過度な期待」は、家族関係をこじらせる原因になることが多いようです。とある家族の例をもとに、熟年期の家族関係とお金のあり方についてみていきましょう。山﨑裕佳子CFPが解説します。※個人の特定を避けるため、登場人物等の情報は一部変更しています。
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学費無償化も「教育費」が一向に減らない理由
文部科学省の子どもの学習費調査(令和5年度)によると、保護者が1年間に支出した子ども1人あたりの学習費総額(学校教育費・学校給食費・学校外活動費含む)は図表のとおりです。
たとえば幼稚園から高校まで公立の場合、15年間でかかる教育費は約600万円です。一方、私立小学校の場合は6年間で約1,100万円と、すべて公立に通う場合の2倍近くかかります。ここに塾やその他習いごと、大学進学費用などを考えると、教育費は天井知らずです。
こうしたなか、近年は幼児教育や高等教育の無償化などが進んでいますが、一部メディアによると、無償化で浮いたお金は塾や習い事に回してしまう傾向があると指摘されています。したがって、教育費全体が極端に軽減されることは現状あまり期待できません。
旧帝大→大手商社に就職…“自慢のひとり息子”を持つ美穂さん
ある秋の夜更け、小林美穂さん(仮名・55歳)がスマホを眺めていると、LINEの通知が届きました。見ると、相手は愛する息子・雄太さん(仮名・28歳)からのようです。
「昇進した。同期トップらしい。次のベースアップが楽しみだわ」
「あら~、凄いじゃない。さすが私の息子だわ」
思わずスマホの前で感想を述べつつ、美穂さんはすぐに返信します。
「よかったわね。あなたの努力の賜物よ」
幼いころから明るく元気で、面倒見がよい雄太さん。おかげで友達も多く、いつも輪の中心にいるような存在でした。加えて負けず嫌いの一面も持ち合わせており、学校のテストはいつもほぼ満点。スポーツも得意で、小学2年生から始めたテニスはいまも続けています。
本人の希望により、高校はテニスの強豪校に進学。その学校は文武両道で、部活に邁進しながらも、大学受験の準備も怠りませんでした。
その結果、無事に第一志望の旧帝大へ進学。就職活動も順調そのもので、本命の大手商社に就職しました。
まさに、ここまで絵に描いたような順風満帆な人生です。しかしその陰には、美穂さんの熱意と、夫・浩二さんの強力なサポートがありました。
