ひとり暮らしの高齢者が増加の一途を辿るなか、「親の孤独死」は、もはや特別な話ではありません。そのような現実を前に、私たちはどのように向き合うべきなのでしょうか。
72歳母「おはよう」のショートメッセージを最後に…東京在住・48歳息子、駆けつけた実家でみた「まさかの光景」に号泣 (※写真はイメージです/PIXTA)

「孤独死」と「孤立死」は違う

内閣府『令和6年版高齢社会白書』によると、65歳以上のひとり暮らしの高齢者数は、男女ともに増加傾向にあり、2020年には男性約231万人、女性約441万人にのぼります。1980年には、65歳以上の人口に占めるひとり暮らしの割合は男性4.3%、女性11.2%でしたが、2020年にはそれぞれ15.0%、22.1%まで上昇。2040年には男性26.1%、女性29.3%になると見込まれています。

 

このような社会背景のなかで、「孤独死」という言葉を耳にする機会が増えましたが、似た言葉に「孤立死」があります。この2つは、しばしば混同されがちですが、意味合いが異なります。

 

「孤独死」は、誰にも看取られずに1人で亡くなることです。家族や友人との交流があっても、亡くなる瞬間にひとりであれば「孤独死」とされます。一方で「孤立死」は、社会的に孤立した状態で亡くなることを表し、近隣住民との付き合いがないなど、孤立している状態が背景にあります。

 

千代さんは、社会的に孤立していたわけではなく、隣近所とのコミュニケーションも比較的活発だったそうです。

 

東京都監察医務院が公表しているデータによれば、2021年に東京23区内で自宅で死亡が確認された65歳以上は6,033人で、そのうちひとり暮らしの男性は2,613人、女性は1,350人でした。また、自宅で亡くなった人のうち、死後1日以内に発見されたのは3,321人でしたが、ひとり暮らしに限ると男性614人、女性415人となり、発見が遅れる傾向にあるようです。

 

現代社会において、高齢の親を持つ誰もが「親の孤独死」に関して当事者になる可能性があります。単身高齢者が増え続けるなか、「孤独死」はもはや特別なことではないのです。日々のコミュニケーションは、万が一の際の早期発見に繋がる命綱となるのです。

 

また、冬場のヒートショックや夏場の熱中症、あるいは転倒といった住環境に潜むリスクは、元気な高齢者の命を突然奪うことがあります。日々のコミュニケーションとともに、物理的な安全対策を両輪で考えることで、孤独死の確率を下げることができるかもしれません。

 

[参考資料]

内閣府『令和6年版高齢社会白書』

東京都監察医務院『東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計』