相続人が遺産相続の割合に納得できない場合、一定の基準として扱われるのが「法定相続割合」です。しかし、遺言書などで遺産の分割割合が指定されていた場合、相続人の合意よりも遺言書の割合が優先されます。では、本来もらえるはずだった遺産を相続できず、納得のいかない相続人はどうすればよいのでしょうか。とある親子の事例をもとに、山﨑裕佳子CFPが解説します。※個人の特定を避けるため、登場人物等の情報は一部変更しています。
お義母さんには血も涙もないんですか!?…最愛の息子を亡くした79歳女性、亡き息子の嫁に「自宅をよこせ」と迫ったまさかの理由【CFPが解説】
姑が嫁に「マンション退去」を迫ったまさかの理由
「……え? お義母さん、どういうことですか?」
困惑する未希さんに対して、千佐子さんは淡々と続けます。
「未希さん、そのマンションを買うために私がどれだけ資金援助したか知ってるわよね? 直哉がいずれは同居してくれるというから援助したのに……こんなことになってしまって」涙声で話します。
そして、「あなた、何も知らないとは言わせないわよ」と怒りをぶつけます。
実は、千佐子さんは直哉さんから懇願されてマンションの購入資金として500万円を融通していました。
千佐子さんの生活費は年金収入だけ。夫の遺族厚生年金があるとはいえ、決して余裕があるというわけではありません。
しかし、かわいい一人息子の頼みを無下にはできず、「いずれは一緒に住もう!」という言葉を信じて、老後資金として確保してあった貯蓄から援助していたのです。
ところが、どんなに待っても同居話は一向にでてきませんでした。しびれを切らして直哉さんと2人きりのときにそれとなく聞いてみると、「母さんはまだ元気だし、1人のほうが気楽だろ」などとかわされる始末。しかし、よくよく話を聞けば、未希さんが同居を拒否しているらしいということがわかったのです。
「そんな……あの資金援助はなんだったの?」と、納得できない様子で詰め寄ると、実は……と、直哉さんは言いにくそうに衝撃の事実を告げます。
「俺たち夫婦はあまりうまくいってないんだ……実は俺がやらかして。その償いの意味もあって、未希にマンションを買えと言われたんだ。資金が足りないなら母さんに出してもらえって迫られたんだよ……母さん、ごめん」
千佐子さんは大きなショックを受けました。しかし、自分が口を出すことで息子夫婦の関係をさらに悪化させるかもしれないと思い、沈黙を貫くことに。
「同居はあきらめるしかないか……」
そう考え始めた矢先、息子が他界したのでした。
悲しみに暮れる毎日が過ぎ、次にやってきた感情は、嫁・未希さんへの憎悪です。
これまで嫁姑の間に問題はないようにみえたでしょう。しかしそれは、姑、千佐子さんの気配りによるものでした。何より息子、直哉さんのためだったのです。しかし、直哉さん亡き今、未希さんに遠慮する必要はなくなりました。
「未希さん、私にも直哉の遺産をもらう権利があるのよ」