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51歳でリストラ…「ねんきん定期便」の年金額を信じていたが
大手メーカーで部長職を務めていた菊池健一さん(51歳・仮名)の人生設計が、一枚の辞令によって大きく狂い始めました。順調なキャリアを重ね、部下からの信頼も厚かった菊池さんを待っていたのは、「早期退職優遇制度」という名のリストラ勧告でした。
「まさか自分が、と思いました。すべて仕事を優先してきた。役員のポジションも見えるポジションだった。周りからも一目置かれる存在だったという自負もあった。それなのに、業績不振を理由にあっさり肩を叩かれるとは思ってもみませんでした」
突然の出来事に呆然としながらも、菊池さんの頭をよぎったのは、今後の生活のこと。2人の子どもはすでに独立していますが、まだ住宅ローンの支払いは15年弱残っています。住宅ローンは65歳を前に完済し、退職金は老後のための“保険”として手を付けず、年金だけで暮らしていく……それが菊池さんのシミュレーションでした。
今年の誕生月に送られてきた「ねんきん定期便」には、65歳から受け取れる年金が月20万円ほどだという記載。「月20万円もらえるなら大丈夫だ」と考えていたといいます。しかし、今後の資産形成について相談にいったときにまさかの勘違いが判明します。
「ねんきん定期便に書かれている年金額が、あくまでも額面であることを知りました。考えれば当たり前のことかもしれませんが……そこまで深く考えていなくて」
専門家からは「手取りは月17万円ほどになりますね」と何とも残念な言葉を告げられます。月3万円の誤差は、1年で36万円、10年で360万円、20年で720万円……「かなりの誤差だな」と焦りを感じたといいます。しかし、その焦りがさらに大きくなります。
その後、それまでの高収入が足を引っ張り、再就職がなかなか決まらなかった菊池さん。それまで働いていた会社の100分の1にも満たない会社から、なんとか内定を獲得したものの躊躇しているといいます。
「想定される給与を基に年金額を再計算してもらったところ愕然としました。60歳まで働き続けたとしても、将来もらえる年金額は当初の見込みより月々3万円ほど減ってしまうというのです。信じていた月20万円の額面が17万円になり、さらに手取り額は14万円ほどになるのですから。漫画のように『ウソだろ……』って、思わず声が出ましたよ」
エリート部長として描いていた老後設計は、51歳でのリストラを機に、もろくも崩れ去ってしまったのです。