物価高が続くなか、今年の猛暑は家計にさらなる打撃となりました。特に影響を受けたのは、年金に頼る高齢者。ある高齢男性の厳しい現実を見ていきます。
「じぃじ、なんか臭い」無邪気な孫の一言に傷ついた69歳男性。年金月11万円「節約のため入浴は3日に1回」の現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

異常に暑かった夏……浮き彫りになる日本の高齢者の困窮

2025年夏(6〜8月)の日本の平均気温は平年差+2.36度で、これまで最も高かった過去2年の+1.76度を上回り、観測史上最高となりました。冷房なしでは到底生きていけないほど、エアコンがフル回転の夏でした。

 

一方で、物価高は留まることを知りません。2025年7月の全国消費者物価指数(2020年基準)は111.9で、前年同月比3.1%の上昇でした。翌8月には指数が112.10に達し、伸び率は前年比2.7%に鈍化したものの、上昇基調に変わりはありません。

 

家計への影響も深刻です。2021年7月、2人以上世帯の平均消費支出は26万7,710円。そして2025年7月は30万5,694円。2021年はコロナ禍という特殊要因下ではあったものの、物価高の影響は甚大です。

 

そのようななか、年金が頼りの高齢者の生活は苦しさを増すばかり。令和7年の年金支給額は、物価や賃金の上昇に伴い3年連続で引き上げられますが、将来の給付水準を確保するため、物価や賃金の伸びよりも低く抑える措置がとられ、引き上げ率は1.9%。実質的には目減りとなっています。厚生労働省『令和6年 国民基礎調査』によると、公的年金受給世帯において「所得の100%が年金」は4割。「80〜100%」の世帯も含めると6割ほどになります。

 

年金が頼りでありながら、実質的な減額が続く――。生きていくだけでも精いっぱい、これが日本の多くの高齢者の現状です。

 

「あのあと、娘から小遣いをもらいました。『少し生活の足しにして』と。娘にも気を遣わせてしまって……情けない。とにかく今は孫の成長が生きがいです。嫌われないよう、気を付けないといけませんね」

 

[参考資料]

総務省『消費者物価指数(CPI)』

総務省『家計調査 家計収支編』