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「パラサイトシングル」と高齢親の困窮…データが示す現実
1990年代後半に社会学者の山田昌弘氏が提唱した概念である「パラサイトシングル」。成人しても親元から独立せず、経済的・時間的に恵まれた生活を送る独身者を指し、これまでさまざまな議論がされてきました。
パラサイトシングルそのものの大規模な調査はありませんが、たとえば2020年に行われた国勢調査では、65歳以上の世帯員がいる世帯(世帯主が現役の3世代世帯なども含む)は約2,270万世帯。そのうち30%は単身世帯(独居高齢者)、30%が夫婦のみの世帯、25%は配偶者のない子どもとの同居とされています。そのなかには、健一さんのように、親から自立できていない中年層もそれなりにいると考えられます。
問題は、彼らを支える親世代の経済状況は、決して安泰ではないということ。厚生労働省『令和6年 国民生活基礎調査』によると、世帯の平均所得金額は536万円、中央値は410万円。高齢者世帯に絞ってみていくと平均314.8万円。高齢者世帯の低所得ぶりが目立ちます。また年金受取世帯に対して、全所得のうち「年金が占める割合が100%」は43.4%、「80~100%」が16.4%。年金への依存度が相当高いことがわかります。
昨今は、物価高を受けて年金の支給額も増加傾向にありますが、物価高分の上昇は見込めず、実質減額となっています。そのようななか、生活苦を訴える高齢者世帯も増えています。同調査で生活意識を聞いたところ、高齢者世帯では「生活がやや苦しい」が30.6%、「生活が非常に苦しい」が25.2%。実に60%弱が生活苦を訴える……それが日本の高齢者なのです。
親による過干渉・過保護、自己肯定感の低さからくる判断力の低下や他者への依存、そして「自分がいなければ子どもは何もできない」という思いからの親子の共依存など、子の自立を妨げる原因はさまざま。
「今は淡々と自宅の売却と、施設への入居の手続きを進めています。息子は未だにブツブツいっています。時間的な猶予はそれほど長くない。実力行使に出るしかないんです」
[参考資料]
総務省『2020年 国勢調査』