国税庁「民間給与実態統計調査(令和5年分)」によると、日本の給与所得者のうち年収1,200万円以上は約1.3%とのこと。そのため、「高収入」や「エリート」といったイメージを抱く人も多いでしょう。しかし、年収1,200万円ながら「生活に余裕がない」と嘆くのは、都内の上場企業に勤める原田隆さん(仮名・47歳)。いったいなぜなのか、原田さんの事例を通して、給与所得者を苦しめる「年金負担増の現実」をみていきましょう。石川亜希子CFPが解説します。
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日本の上位1.3%だが…年収1,200万円の47歳サラリーマン、もうすぐ始まる〈厚生年金負担増〉にため息「どれだけ働いてもラクにならない」【CFPの助言】
原田家の年金負担はどれくらい増える?
厚生年金の保険料率は都道府県によっても異なりますが、東京都を例にみていきます。
原田さんの年収が約1,200万円、うちボーナスを240万円とすると、毎月の給与は月額80万円です。月額80万円を標準報酬月額にあてはめてみると、厚生年金保険料は上限の5万9,475円に該当します。原田さんの場合、給与から厚生年金保険料として毎月5万9,475円が天引きされていることになります。
今回引き上げられるのは、この上限です。現在は上限が65万円なので、毎月の給与が標準報酬月額65万円に該当する63万5,000円以上の場合は、どんなに給与が増えても自己負担は5万9,475円のままでした。
しかしこの65万円という上限が、2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円と、段階的に引き上げられることになりました。
原田さんの場合、給与の月額は80万円ですから、引き上げられた上限も超えています。東京都の40歳以上の厚生年金保険料率は9.15%なので、2029年になれば、厚生年金保険料は75万円×9.15%で6万8,625円になります。毎月9,150円の増加です。
家計全体でみると、月1万円はそんなに大きな影響をおよぼさないかもしれません。しかし、住宅ローンの返済額や妻に渡している生活費を減らすわけにはいきませんし、教育費はこれから増える一方です。
「結局、減るのは自分のお小遣いか。どれだけ一生懸命働いても、このままラクになることはないのかな……」
高所得者は負担増だが…メリットは?
上限の引き上げで厚生年金保険料の負担額が増えれば、将来もらえる年金も増えるということです。では、本当に増えるのでしょうか?
厚生労働省によれば、
賃金などが月75万円以上の方の場合、保険料(本人負担分)は月9,100円(社会保険料控除を考慮すると月約6,100円)上昇し、その状態が10年続くと、月約5,100円(年金課税を考慮すると月約4,300円)増額した年金を一生涯受け取れます(一定の前提をおいて試算しています)。
とのことです。