国税庁「民間給与実態統計調査(令和5年分)」によると、日本の給与所得者のうち年収1,200万円以上は約1.3%とのこと。そのため、「高収入」や「エリート」といったイメージを抱く人も多いでしょう。しかし、年収1,200万円ながら「生活に余裕がない」と嘆くのは、都内の上場企業に勤める原田隆さん(仮名・47歳)。いったいなぜなのか、原田さんの事例を通して、給与所得者を苦しめる「年金負担増の現実」をみていきましょう。石川亜希子CFPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
日本の上位1.3%だが…年収1,200万円の47歳サラリーマン、もうすぐ始まる〈厚生年金負担増〉にため息「どれだけ働いてもラクにならない」【CFPの助言】
原田さんの年金受給額はどれくらい増える?
上限引き上げ後、原田さんは10年間で109万2,000円の負担増となります(9,100円×12ヵ月×10年)。
そして、受け取る年金が月あたり約5,100円増であるなら、控除や税金を考慮せずに単純計算で考えると、109万2,000円÷5,100円=約214ヵ月、負担が増加した分を回収するには約17.8年かかる計算です。
つまり、65歳から年金を受給するとして、単純計算で82歳を超えてはじめてメリットが生じます。社会保険料の控除や所得税の減額などを考慮しても、少なくとも79歳を超えないと回収できません。
とはいえ、上限引き上げによって保険料収入が増加し、運用益の増加も見込まれるため、年金の給付水準が上がることにもつながります。長い目で見れば、メリットがあるといえるのではないでしょうか。
負担額増の不安には情報収集で備えを
今回の標準報酬月額の上限引き上げは「負担増・手取り減」の部分が強調されがちですが、長い目で見れば、将来の年金額増や節税効果といったメリットもあります。
いまは、情報を知らないこと自体が損につながる時代です。制度の仕組みを理解しつつ、教育費や生活費の支出を見直し、資産運用などでキャッシュフローを補うといった、家計の備えを欠かさないようにしましょう。
石川 亜希子
CFP