妻の不満が限界突破…“放任主義”の夫に「離婚宣言」

そう語る歩美さんに対し、息子が振り回されているのではと心配しながらも、雄介さんはこれまで、できるだけ妻の意向に沿うよう努めてきました。彼女の神経を逆なでしないよう、慎重に振る舞ってきたのです。

しかし歩美さんからすると、雄介さんは「自分の意見を持たない人」「子どもに対して無関心な放任主義」としか映っていませんでした。雄介さんはただ、子どもの気持ちを尊重し、のびのびと育てたいと願っているだけなのですが……。

「もういい! 大成のことを真剣に考えない父親なら、いないほうがマシよ!」

ある日、歩美さんは雄介さんに宣言しました。

「離婚しましょう。これからは大成と2人で暮らします。ただし、ただで離婚するわけにはいきません。生活費と養育費はきちんといただきますからね」

大声をあげる妻に、反論するすべはありません。雄介さんは、妻の宣言を受け入れることにしました。しかし、内心モヤモヤが残ります。

(養育費はわかるけど……なぜ別れた妻の生活費まで?)

しかし、妻の機嫌を損ねるわけにはいきませんから黙るしかありません。

すると、しんとしたリビングに、2階の子ども部屋から大成くんがやってきました。

「母さん、興奮するなよ。勉強してたのに、こっちの部屋まで丸聞こえで集中できないんだけど」

「あら……大成ごめんねえ。ねえ大成、こんな家出て行って、今日からママと暮らしましょう。ママ、離婚するから。い~い?」

「別に。勝手に離婚すれば? だけど、俺は父さんと暮らすから」

思いがけない返答に、歩美さんは言葉を失いました。しばらく沈黙したあと、「……はぁ? お父さんはあなたのことなんて、なにも考えてないのよ」とようやく口を開くと、大成くんは我慢ならない様子で、これまで胸に溜めてきた思いを語り始めました。

「あのさあ、いい加減にしてよ。なんにも考えてないのはどっちだよ! ずっと我慢してきたけど、母さんが俺の意見を聞いてくれたことなんて一度もないだろ……。俺のため俺のためっていうけど、結局は“自慢の息子”をつくることしか頭にないんだろ? 父さんがいなかったら、とっくに爆発してる。母さんは1人で暮らせばいいよ。そのほうが俺も父さんも幸せだから」

最愛の息子の“本音”を知った歩美さんは、あまりのショックに思わず号泣。

冷たい視線を向ける息子に対して「全部アナタのためだったのに……!」と吐き捨て、自室にこもってしまいました。