横山夫婦と息子家族の「その後」

「だから、代わりといっちゃあなんだが……よければ次の長期休み、こっちで孫を預かろうか？　ひとりで留守番させるにはまだ早いし、学校が休みになるとパートにも出れなくて困ってるって言ってたろ」

すると、思いがけない反応がありました。

「そんな……いいんですか!?　気軽に頼める人がいなくて困ってたんです。お義父さんたちがみてくださるなら安心です！　すみません、よろしくお願いします」

息子も驚いた様子です。

「子どもが休みのあいだも妻と2人で働けたら、家計もずいぶん楽になるよ。本当に助かる、ありがとう」

そして、その年の冬、可愛い盛りの孫を預かった横山夫婦。大変なこともありますが、息子夫婦にも感謝され、愛する孫と交流する時間も増え、忙しいながらも2人の顔には自然と笑みがこぼれます。

また、孫の世話を通じて義娘と会話が増えていくにつれ、彼女の子どもや夫に対する深い愛情に気づいたという横山さん。図々しいと感じていた義娘の言動も、懸命な子育てゆえの家計不安があったからだろうと受け止めるようになりました。

「思い返せば、こちらの理解も足りていなかったのかもしれません。勝手な思い込みを反省しました。これからも、できる範囲で私たちなりの手助けをしていこうと思います」

家族との絆を深める方法はたくさんありますが、忙しい子育て世代にとって、家事や育児の一部を担ってもらえることは、お金以上の価値を持つことがあります。

また、コミュニケーションが生まれることで「お金目当てに帰省してくる義理の子ども」「資金援助してくれない冷たい義理の親」という誤解も生じにくくなるでしょう。

共通の思い出を作りながら関係を紡いでいく時間は、夫婦の老後にとっても、お金では決して買えない暮らしの彩りとなるはずです。

山原 美起子
株式会社FAMORE
ファイナンシャル・プランナー