子育てが終わり、子どもが家庭を持つと、親としての役割も変化していきます。孫と会う喜びはなにものにも代えがたいものですが、子のパートナーである「義理の娘」や「義理の息子」との関係に悩む親世代も少なくありません。なかには、子の帰省が大きな精神的負担へと変わってしまうことも……。60代夫婦の事例をもとに「家族との適切な距離感」についてみていきましょう。株式会社FAMOREの山原美起子CFPが解説します。
孫には会いたい、でも…年金月25万円・貯金4,000万円の60代夫婦が「息子家族の帰省」を嫌がる理由【CFPの助言】
帰省のたびに…「義娘」に頭を抱える60代夫婦
「息子にも孫にも、もちろん会いたいですよ。でも……“あの子”もついてくると思うと、気が重くなるんです」
そう嘆きながら肩を落とす横山さん(仮名)。彼は65歳で定年退職し、現在妻との2人暮らしです。貯金は4,000万円ほどで生活に不自由はないものの、大きな悩みを抱えています。
「義娘は帰省のたびに、孫の近況報告といいながら『私学はお金がかかって大変なんです』『うちには車がなくて……送迎に車があれば便利なんだけど』などと、最後は必ず資金援助の話にもっていくんです。機嫌取りのためのお世辞にもうんざりします」
これまで「孫のためなら」と資金援助を続けてきた横山さん。しかし、義娘の要求は止まりません。息子に「なんとかならないものか」とやんわり伝えてみても、「家計は妻に任せているから」と歯切れが悪く、義娘に強く言えない様子です。
「さすがに老後資金が心配になってきて……。しばらく息子家族とは距離を置きたいと考えているんです」
“おねだり”を受け入れ続けると…横山夫婦を待ち受ける最悪の結末
横山夫婦は65歳以降、月25万円の年金を受給しています。貯金は先述したように4,000万円あり、自宅の住宅ローンはすでに完済しています。
ただ、この先「ゆとりある老後」を過ごすために月35万円の支出を想定すると、不足額は10万円。これを貯金から取り崩せば、単純計算で約33年分、98歳まで資金は尽きない見込みです。
しかし、ここに息子家族への援助が加わると、どうなるでしょう。仮に年間100万円援助すると、83歳のときに老後資金は底をつく計算になります。
さらに、資金援助が“慣習”になると「言えばもらえる」という意識が芽生え、やがて資金の使い道は教育費だけでなく、住宅資金や生活費の補填などにまで拡大する可能性も否定できません。