パーソルキャリア株式会社が運営する調査機関「Job総研」によると、地方移住に対して全体の59.8%と半分以上の人が興味ありと回答しているそうです(2023年・地方移住の意識調査より)。ただし、特に高齢者が地方移住を検討する場合、“思わぬ落とし穴”が存在することを把握しておかなければなりません。具体的な事例をもとに「シニアの地方移住」がもたらす遺族への弊害と、その対策をみていきましょう。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「最後くらい好きに生きる」生まれも育ちも埼玉県の父が〈沖縄〉に移住→3年後、預金2,000万円を遺して逝去…51歳息子が「勘弁してくれ」と嘆いた〈親の地方移住〉の思わぬ弊害
いったいなぜ…突然「沖縄移住」を宣言した父
――ある日、都内のメーカーに勤める京介さん(仮名・51歳)のもとに届いた父の訃報。その電話は、遠く離れた沖縄からでした。
父の清さん(仮名・享年78歳)は、埼玉生まれ埼玉育ち。地元の企業で新卒から定年まで経理一筋で勤め上げた、まじめで厳格な人物でした。
そんな清さんが突然「沖縄に住みたい」と言い出したのは約3年前のこと。長年連れ添った母が亡くなり、父が一人暮らしになって数年が経ったころのことです。
「どうして75歳のこのタイミングで沖縄に移住なんだ。親戚も友人もいないだろ?」
京介さんの問いかけにも、清さんの決意は揺らぎませんでした。
「75歳のいまだからだよ。後期高齢者になって、自分の終わりを考えるようになったんだ。最後くらい好きに生きさせてくれ」
清さんは息子の反対を押し切り、実家を売却してまで沖縄に移住してしまいました。
父の充実ぶりに、息子の心境も変化
青く美しい海、地元の人たちとの釣りやバーベキュー、習い始めた三線……。移住後の清さんからは、毎週のように近況報告が届きました。
「沖縄はいいぞ。お前も家族を連れて遊びに来い」
電話の向こうから聞こえてくる父の声は、これまで聞いたことがないほど明るく弾んでいます。
「あんなに寡黙で頑固だった親父が、別人のように生き生きしている。第二の人生として、思い切って移住してよかったのかもしれないな」
移住前は必死に引き止めていた京介さんでしたが、清さんのあまりの充実ぶりに、しだいにその気持ちが変化してきました。
――ところが、その平穏は、そう長くは続きませんでした。