息子夫婦の帰省を喜べない67歳夫婦

後藤佳代さん(仮名・67歳)は、同い年の夫との2人暮らし。貯金約3,000万円と月23万円の年金で、のんびりした老後を送っています。

ひとり息子の和也さん(仮名・42歳)は、大学卒業後に実家を出て、現在は都内のマンションに妻の奈緒美さん(仮名・38歳)と娘と3人で暮らしています。

佳代さん夫婦は、年末年始や何かしらの記念日には息子夫婦と食事を楽しむなど、長年良好な関係を保ってきました。しかし、孫が誕生してからは、その関係性に変化が生まれたといいます。

子育ての大変さからか、息子夫婦は車で30分ほどの距離にある佳代さん夫婦の家に、頻繁に帰省するようになったのです。

――ピンポーン

「お邪魔しますー! はあ、疲れた。ちょっと休ませて」

事前連絡もなく、奈緒美さんは到着するやいなや孫を佳代さんに預け、すぐ自室へ。気づけば離乳食の準備からお風呂、夜泣きの対応にいたるまで、佳代さん夫婦に育児を丸投げするようになり、しまいには、紙おむつや着替えなども「実家で準備するのが当然」とばかりにいっさい持参しなくなってしまいました。

我慢ならず和也さんに苦情をいうも、和也さんは申し訳なさそうな表情で「ごめん……しばらくしたら落ち着くはずだから」と言うばかりです。

佳代さんは、言葉には出せないモヤモヤした感情を抱えながらも、「近所の奥さんは『息子夫婦が実家に顔を出さず、孫に会えない』って嘆いていたわ。それに比べたら、いつでも孫に会える私たちは恵まれているかもしれないわね」と言い聞かせ、孫の世話を続けていました。