最初は「パパのため」だったが…

70歳の辰雄さん(仮名)は、月18万円の年金で一人暮らしをしています。

現役時代は体育教師だった辰雄さんのモットーは、「質実剛健」。定年を迎えたあとも贅沢とは無縁の生活を送っていますが、65歳の退職当時、5,000万円あった貯金はすでに3,000万円を切っています。なぜ2,000万円もの大金が消えてしまったのでしょうか?

その原因は、近所に住むひとり娘・京香さん(35歳)からの繰り返される“おねだり”でした。

おねだりは“純粋な善意”からはじまる

ことのはじまりは、妻を亡くして悲しみに沈む辰雄さんを見かねた、京香さんの提案でした。

「ねえ、いつまでも家に引きこもってちゃダメよ。わたしが犬を飼うから、一緒に散歩しよう」

「ルル」と名づけられたそのトイプードルは、心なしか妻に似て愛らしい表情をしており、辰雄さんにもよく懐いてくれました。しだいにルルとの散歩が日課となり、だんだんと明るく健康的な生活を取り戻していった辰雄さん。そのときは、「娘がいてくれてよかった……」と心から感謝したそうです。

しかし、ほどなくして京香さんがカード明細を持ってやってきました。

「ペットショップの引き落としがあるの。これ、パパが払ってくれるよね?」

犬の迎え入れにかかった初期費用や飼育グッズ、高級ペットフード、ワクチンなどを含め、総額は100万円を超えています。あまりの額に驚きつつも、娘への感謝もあり、「今回だけなら」と支払いを承諾しました。

ところが、その後もエサ代にトリミング代にと、毎月請求してくるようになりました。しまいには、「ルルちゃんには24時間エアコンが必要」と電気代まで支払いを求め、辰雄さんが渋ると拗ねた態度で口も利かなくなります。