子育てが終わり、子どもが家庭を持つと、親としての役割も変化していきます。孫と会う喜びはなにものにも代えがたいものですが、子のパートナーである「義理の娘」や「義理の息子」との関係に悩む親世代も少なくありません。なかには、子の帰省が大きな精神的負担へと変わってしまうことも……。60代夫婦の事例をもとに「家族との適切な距離感」についてみていきましょう。株式会社FAMOREの山原美起子CFPが解説します。
孫には会いたい、でも…年金月25万円・貯金4,000万円の60代夫婦が「息子家族の帰省」を嫌がる理由【CFPの助言】
「息子夫婦と距離をとる」は“最適解”ではない
また、今回の問題は、老後資金の不安だけではありません。
横山夫婦は義娘の態度から「どうせまた私たちのお金が目当てなんだろう」という疑念が生まれ、もともとは心から楽しみにしていたはずの息子家族の帰省が苦痛になっています。
一方、義娘自身には悪気はなく、夫婦が“おねだり”だととらえている発言は、単純に子育ての悩みや不安をこぼしているだけという可能性もあるかもしれません。
いずれにせよ、孫との楽しい時間を望むのであれば、義娘と距離を置くという選択は逆効果でしょう。資金援助が原因で孫と会えなくなってしまっては、本末転倒です。
息子家族と良好な関係を築くための手がかりは「お金以外の関わり方」にあります。
資金援助を断る際は、曖昧な態度で「余裕があるはずなのに」と不信感を与えないよう、試算した客観的な数字を根拠にするとよいでしょう。「援助を続けると家計は破綻し、逆に『支えてもらう立場』になりかねない」と、息子家族にもリスクがあることを説明すると理解を得やすくなります。
加えて、「資金援助の頻度を減らす代わりに」と、できる範囲で代案を提案すれば、息子家族の不満を和らげることができるでしょう。「金の切れ目が縁の切れ目」とならないよう、お金に偏らない交流の軸を作ることが重要です。
週末…いつものように義娘の“おねだり”がはじまる
その後、帰省のたびに資金援助をしていた自分たちの行動を見直し、“お金以外”でどんなサポートができるか考えた横山夫婦。
とある週末、いつものように義娘の“おねだり”が始まった頃合いをみて、横山さんは勇気を出して言いました。
「義娘さん、申し訳ない……。はっきり言って。これ以上の資金援助は難しい。うちの家計もだんだん厳しくなってきてね、このままだと、今度はこっちが助けてもらう立場になるかもしれないんだ」
「えっ……? ま、またまたぁ! お義父さん、冗談やめてくださいよ~」
義娘は引きつった笑顔でそう返します。