日本人の2人に1人が一生涯に一度は罹患するといわれるがん(国立がん研究センター「最新がん統計」より)。そんながんについて、「治療に莫大な費用がかかる」というイメージをもつ人は多いのではないでしょうか。しかし、日本の公的医療保険、特に「高額療養費制度」を活用すれば、自己負担額を大きく抑えることが可能です。看護師FP・黒田ちはる氏の著書『【図解】医療費・仕事・公的支援の悩みが解決する がんとお金の話』(彩図社)より、いざというときのために知っておきたい医療費の基本をみていきましょう。
(※写真はイメージです/PIXTA)
総額100万円の医療費、年収370万円~770万円の人が「高額療養費制度」で軽減できる驚きの自己負担額【看護師FPが解説】
がんの標準治療は保険適用の範囲
がんの標準治療とは、現在の治療において科学的根拠(エビデンス)に基づき、もっとも効果が期待でき、安全性が確認されている治療のことを指します。
「がん情報サービス」ホームページには以下のように書かれています。
標準治療は、世界中で行われた臨床試験の結果を多くの専門家が集まって検討し、有効性と安全性を確認して、最良であると合意が得られた治療法です。診療ガイドラインには、これらの合意の内容の詳細などがまとめられています。また、全国のがん診療連携拠点病院などのがんの治療を行う病院では、診療ガイドラインに沿った標準治療が行われています。なお、「最新の治療」が最も優れているとは限りません。「最新の治療」が標準治療になるためには、それまでの標準治療より優れていることが証明される必要があります。そのため、開発中の試験的な治療として、効果や副作用などを調べる臨床試験が必要です。つまり、「最新の治療」というだけでは、「最良の治療」にはならないのです。(「がん情報サービス」ホームページhttps://ganjoho.jp/public/knowledge/guideline/index.htmlより)
標準治療のほとんどが健康保険(公的医療保険)の適用となりますので、突然数百万円かかる可能性は低いことが分かります。
「がん治療=莫大な費用がかかる」というのはイメージにすぎません。まずは「どんな公的制度があるのか」を知ることが大切です。
ここからは具体的な制度の内容について説明していきます。
少し複雑に感じるかもしれませんが、一人で悩む必要はありません。読んでいて難しいことがあれば、病院内のがん相談支援センターや医療連携室といった相談窓口、あるいはFPなどの専門家に確認してみましょう。
あなたが不安に思う時間や、情報を探す時間を、前向きに治療と向き合うための時間に変えることができますよ。
高額療養費制度でさらに負担が減る
健康保険によって、検査や治療にかかる費用は、1~3割負担で済みます。ただ、30万円でも高額ですので、さらに負担を減らすしくみが「高額療養費制度」になります。一般的な収入(年収約370万~約770万円)の場合は最終的には8万円台になります。
なお、マイナ保険証や限度額適用認定証があると、窓口での支払いは自己負担限度額までとなり、医療費負担を抑えることができます。
しかし、この自己負担限度額というのは収入によって変わります。もしも収入が違う場合は医療費の自己負担額も変わります。
まずは図表3でご自身の収入の区分ア~オを確認して、覚えておきましょう。


