家族を失った男性が気づいた「本当の豊かさ」とは

別居から半年後、康夫さんは一人暮らしの現実と向き合っています。3,000万円の資産があっても、一人で食べる食事の味気なさ。体調を崩しても心配してくれる人がいない孤独感。ゴルフ仲間とも疎遠になり、「お金があれば幸せ」という価値観が、いかに浅薄だったかを痛感しています。

洗濯や掃除、買い物といった日常生活の全てを一人でこなすことの大変さも実感しました。美佐子さんがどれだけ自分を支えてくれていたか、失って初めて気づいたのです。

調停を通じて話を聞く中で、康夫さんは妻の本音を初めて知りました。

「俺はなんて馬鹿だったんだ!」

気付くのが遅すぎたことを、いくら後悔してもしきれません。

康夫さんはゴルフクラブは売却し、美佐子さんとの復縁は難しいかもしれませんが、「もし次のパートナーができたら、お金の価値観を共有し、対等な関係を築きたい」と語ります。

また、成人した子どもたちとの関係修復にも努めています。「父親として、もっと家族のそばにいるべきだった」と反省し、孫との時間を大切にするようになりました。資産があっても心の豊かさがなければ、本当の幸せは得られません。